先日のクイズ(Q1)「トイレがきれいなサービス施設はどこか」に対する答えである。JCSIの調査によると、第一位は、東京ディズニーリゾート(ディズニーランド、ディズニーシー)だった。予想通りなのだが、驚愕すべきは、顧客満足度(CS)とトイレの清潔度との相関が、0.62もあったことだ。
JCSIの「トレイ清潔度データ」をやや詳しく見てみよう。
2013年度に調査が終わっている業種の企業別データを、「トイレの清潔度」でソートしたものである。トイレの清潔度は、7点満点の平均値である(N=300+)。なお、CS(顧客満足度)のランキングを右列に加えてある。
<トイレの清潔感の評価> 上位10社(7点満点)
順位 企業・ブランド名 平均値 CS(満足度)の順位
1 東京ディズニーリゾート 6.24 1
2 帝国ホテル 6.23 3
3 ホテルオークラ 5.94 7
3 宝塚歌劇団 5.94 4
5 劇団四季 5.92 2
6 木曽路 5.89 9
7 ANAホテル 5.85 30
8 フォルクスワーゲン 5.84 72
9 ホテルニューオータニ 5.83 18
10 日航ホテル 5.80 15
*注:2013年度:JCSIの調査済み企業218社中のランキング
(このデータセットには、「百貨店」が含まれていない)
<解説>
このデータを見て、皆さんはどのように感じるだろうか?予想の通りだと感じただろうか?TDRは、全体的な顧客満足度(CS)でもナンバーワンである(2013年度JCSI調査)。
すぐに気が付くのは、二つのことだろう。まずは、トイレがきれいな企業は、レジャー業界とホテル業界に多いこと。上位5位まで (東京ディズニーリゾート 、帝国ホテル、ホテルオークラ、宝塚歌劇団、劇団四季)は、すべてどちらかの業界のトップ企業である。「夢を売る商売」の施設だから、当然だろう。それにしても、きれいな結果である。
そして、「顧客満足度が高いサービス企業は、トイレもきれいだ」ということだ。トイレのきれいな施設を持つ上位6位(東京ディズニーリゾート~木曽路)までが、CSの順位でも一桁である。
トイレの清潔度とCSの「(スピアマンの)順位相関係数」を計算してみた。順位相関(係数)とは、取りあげた2つの要因の間に、どの程度の高い関連性があるかを見る指標である。なんと、これが0.62もあったのである(直感的な説明:トイレの清潔度をみれば、6割がた顧客満足度が説明できる)。
ほどほど、トイレの清潔度を見れば、サービスの満足度が予測できてしまうのである。あるいは、逆の因果関係で、お客様の満足度を重視している企業は、トイレをピカピカに磨いているのである。
CSのランクが高いのに、トイレの清潔度では10位に入っていない企業は、4つのうちの3つがビジネスホテル(リッチモンドホテル、ドーミーイン、コンフォートホテル)である。しかし、この3社のトイレの清潔度も、決して低いわけではない(5.5~5.7)。
気になるのは、業種別の「トレイの清潔度」の順位である。業種別の「トイレ清潔度順位」については、ちょっと面白い結果が出ている。機会を改めて紹介したいが、業種によっては、CSが高い企業とトイレの清潔度が相関していない場合もある。たとえば、飲食業(カフェ、レストラン)、小売業(食品スーパー、家電量販店)などがこれに該当する。
なお、JCSIのサービス品質評価(SQI)では、「全体的な清潔度」も測定している。全体的な清潔度とCSの相関は、わずか0.51である。つまり、トイレの清潔度が、サービスに対する顧客満足度を「より高い精度」で推測できるのである。
「お客様の満足度を知りたければ、トイレを覗いてみよう」(笑)。
これは、びっくりな結果である。しかし、笑えない事実でもある。
わたしは、店舗調査などフィールドワーク(現場調査)で学生を指導するとき、「お店についたら、まずはトイレに入ってみよう」と言ってきた。
JCSIの「トイレ清潔度」のデータを見る限り、この指導方法は、まったくもって正しかったのである。