ローソンの加盟店経営支援策は功を奏するだろうか?

 経産省から「コンビニの課題、有識者会議」の報告書が公になったことを受け、ローソンが加盟店を支援する新パッケージを発表した。竹増社長の記者会見を聞くため、東京駅付近の会見場に出向いてみた。会場の様子と各社記事について、個人的な感想を述べてみたい。本日のブログは少し長めになる。

 まずは、代表的な記事(共同通信)を、以下に引用する。総じて言えることは、本日(2/8)の各社記事(日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、産経新聞)はともに、ローソンに好意的な論調になっている。とくに新たな加盟店支援策(低収益店に月額4万円)とFC店5年契約(新設)の2点に、記事内容は集約されている。
 竹増社長は、その他の支援策を7つほど(クルー募集や研修教育支援、新規開業者への優遇策、収納代行料金の値上げなど)を発表していたが、会見で出た記者からの質問も本日の新聞報道も、主たる関心は低収益店支援に集中していた。
 コンビニ同士や業態を跨いでの競争が激化しているため、経営がきびしくなっているオーナーが出ていることに社会的な関心は向けられている。その解決策について、経産省の有識者委員会がいくつかの問題提起をしているが、それは抽象的な段階に留まっている。当たり前のことだが、具体的な解決は、コンビニの本部にゆだねられる。
 今回は、かつての大店法の規制時代とは、提言の質が異なっている。政府が保護を要請している対象は、小売店主とその従業員である。コンビニ誕生から40年数年が経過して、経営の形態はちがえども(個人店主からFCオーナー)、オーナーの生活と未来が苦境にあることは同じである。その昔は生活を脅かす競合(大型店)として、いまは運命共同体(本部と加盟店)の仲間として、働きに対して充分な見返りが得られていない店主の立場として。 
   
、竹増さんの会見内容でわたしが注目したのは、本部社員(たとえばSV)の評価指標(給与・ボーナスの査定)に、加盟店の店利益をダイレクトに連動させている点だった。そして、次期(2020年度)の会社目標として、加盟店の店利益を110%に伸ばすことが明確に掲げられていた。
 ところが、会場の記者たちからは、「110%の店利益増」に質問がほとんど出なかった。ローソンとしては、おそらくは、「店利益を110%に伸ばすことは可能だ」と考えているはずである。だから、具体的な数値目標を発表したのだ思う。実際に、2019年度の着地は、105%の利益増である。2019年度の残りはあと数週間だから、店利益+105%の達成はまちがいない。だから、それにプラス5%は、決して荒唐無稽で無理な目標設定ではない。
 わたしが見たところ、若い記者たちは、これを大手企業がとりあえず設定した「株主向けのリップサービス」と受け取ったようだった。記事を読んだ多くの加盟店主たちも、同様に感じているようだ。2018年あたりから、諸経費増でコンビニ各社の加盟店利益は減り続けてきたからである。この流れを変えることは、個店の企業努力だけでは不可能だとオーナーたちは考えている。
 フードロス削減のための「値引き・ポイント還元プログラム」を取材するために、昨年は全国各地の現場でオーナーたちを取材してきた。その際に、彼らがある種の絶望感を抱えて働いている様子をひしひしと感じてきた。チャージ率(本部の取り分)を変えてほしいというのが、多くのオーナーたちの期待だと思う。 
 
 チャージ率の仕組みに手を加えることは、いますぐコンビニ本部ができることではない(セブン-イレブンは昨年、料率に関しては一部に手を加えている)。株主(ファンドや機関投資家)や親会社(大手商社)の意向がある。自らの首を絞める人間はいない。本当にシステムが機能不全にならないと、抜本的な改革(粗利分配方式とコンビニ会計のシステム変更)はできないだろう。
 その前段階として、フードロス削減や値引き販売の推進で、オーナーにとっても本部にとっても経営が良い方向に向かうはずの「店利益の改善」を目指す決断をしたのだと考える。そのことの意味が記者会見ではうまく伝わっていなかった。ローソンの立場からは、その点がしごく残念だった。
 店利益110%増に対しては、客観的な根拠があるのにである。この先は、加盟店の信頼を得るには、実際的な成果を示すことだろう。2020年の上期中で目標の半分くらいでも実現できなければ、際に立っている加盟店は失望してしまうだろう。もっとも、加盟店も経営者として努力をする必要もあると考える。
 地方を回ってみて、値引き販売やフードロス削減に創意工夫している店舗では、収益が高まっていることも事実である。すべての店主が本部の援助に依存しているわけではない。全国一律でないところが、数千人の加盟店オーナーを抱える組織のむずかしいところでもある。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
<参考記事>
日本経済新聞社「FC店5年契約新設 ローソン、単独店に支援金」
朝日新聞「ローソン、低収益の店に月4万円 複数店経営なら支援延長」
 社説「コンビニ改革 脱・一律へ動き加速を」
毎日新聞「ローソン、加盟店に4万円支給」
東京新聞「低収益加盟店に月4万円 ローソン新たな支援策」
産経新聞<大阪>「ローソン、低利益1,200店に支援金」
 
<通信社>から
■共同通信
「◎低利益1200店に支援金 ローソン、経営安定化策(2020/02/07 17:06)」
  ローソンは7日、全国約1万4千店のうち低利益の1200店を対象に、3月から1年間限定で月4万円の支援を
始めると発表した。競争が激しくなっている現状を踏まえ、加盟店の経営安定化を狙う。複数店の経営を推奨することや、
オーナーを獲得するための新たな施策も打ち出した。
 加盟店支援に年間約400億円を投じる計画だ。竹増貞信社長は東京都内で記者会見し「本部の数値目標を売り上
げから店利益に変更し、前年比110%を目指す。加盟店と目標を一つにして走っていく」と強調した。
 経済産業省は6日、コンビニの課題を議論する有識者検討会の最終報告書を公表。オーナーの負担軽減などが盛り込まれ、ローソンはいち早く対応策をまとめた形だ。
 低利益店に対しては、1年の支援期間中に複数店経営を始めた場合、月4万円の支給を2年延長した上で奨励金
150万円を追加する。オーナーとのフランチャイズ契約の期間はこれまで10年だけだったが、5年を新設して選択制とする。
 新規オーナーのオープン直後の売り上げが事前予想を大幅に下回らないよう、既に開店している直営店を引き継ぐ方法も始める。売り上げの予想が立てやすく、オープン時に従業員を新たに確保する必要がないといった利点がある。
 このほか、都市部に拠点を設けて専属社員100人を配置し、オーナーが休みやすい環境を整備する。
 
■時事通信
「加盟店支援へ月4万円=ローソン、店舗網維持狙い(2020/02/07-19:01)」
 ローソンは7日、来年度から加盟店に収益安定のため月4万円を助成する支援策を発表した。店舗網を維持し、競争力を高めるのが狙い。全国約1200店が対象。働き方改革も進め、店主が休暇を取りやすい環境を充実させる。
 総額400億円規模の支援で、加盟店経営のてこ入れを図る。
 コンビニエンスストア業界では、少子高齢化の進展や労働環境の厳しさから、加盟店の後継者を確保するのが課題。今回の支援金は1店舗だけを経営するオーナーに1年間限定で供与。1年以内に複数店経営に移行したオーナーには支援金交付期間を3年に延長する。新規参入を促すため、加盟店契約の期間を従来の10年に加えて5年も選択できるようにするほか、一定の収益が見込める直営店を引き継ぐ制度も設ける。 
 記者会見した竹増貞信社長は「利益低下で将来不安を抱える店が増えた。支援金で経営基盤を安定させてもらいたい」と説明した。