2011年元旦に、「小川先生の大予測(7年ぶり!)」と言いながら、皆さんに肩透かしを食らわせてしまった。2014年は大予言から10年。当時の「大予言」を再度レビューしてみたい。なお、2014年2月4日(節分)を境に、わたしは大殺界から出て大躍進の年を迎えるらしい。
すでに、今年の誕生日(10月23日)以降は、金運も仕事運も昇り竜の状態にある。大躍進はすでに始まっているように思う。上昇気流に乗っているような感じがするのだ。
わたしは、OB会の席などで、その年を占う「大予言」をしていた。霊感が衰えてきたのか、そうしたことに興味を失ったのかどうなのか、予言者としてはすでに終わったつもりでいた。しかし、「最後の大予言(2004年)」を10年後にレビューしてみたい。大予言は、2004年の1月14日(水)だった。
法政大学市ヶ谷校舎835番教室で行われた「マーケティング論」の最終講義で配布された「講義レジュメ」を見ている(HPにアップされているので、採録することにする)。タイトルは、「日本とマーケティングの未来」であった。
10年先の日本の姿を予見していたことがよくわかる。やはり預言者の能力はあったようだ。
<2005年の大予測>(2004年1月14日)
(1)米国型マーケティングの終焉
米国を代表する3つの企業が、10年以内に深刻な経営危機を迎えます。その根拠は、米国型のマスマーケティングが歴史的な役割を終えるからです。メガブランドとはいえど、実は永遠ではありません。マック、コーク、ディズニー、現代を代表する3つの米国ブランドがまちがいなく倒れます。その根拠は、以下の4つです。
・米国経済の地位低下:
中国とインドが台頭してきたら、世界の重心はアジアに移ります。
米国の時代が終わるとともに、栄光の頂点にいた米国のブランドは消えます。
・米国型の浪費経済文化への反省。
京都議定書を未だ批准できない米国は、いずれ世界からつまはじきにされます。
資源が有限であることがわかれば、浪費の象徴であるマックは世界から消えます。
・先進国における少子老齢化
やっぱり年をとったら、マック、コーク、ディズニーではないよね。
<10年後の評価>
2014年12月現在、オリエンタルランド(ディズニー)の業績は好調である。予言は外れのようだ。
マクドナルドは、国内外ともに企業として大いなる転換期を迎えている(今年度、連載してきた、「マクドナルドの時代は終わった」を参照してもらいたい)。コークのブランド価値は最上位にランクされているものの、そろそろ盛りを過ぎてきている。新興国の成長があるから目立たないが、日本や欧州では、飲料としてはコーヒーと茶系飲料に向かっている。
(2)日本では消費の中心モードが”和”に向かいます
おそらく数年以内に、日本発のデザイナーとアーティストが、世界の芸術界(デザイン、音楽、工芸分野)において大活躍をする時期が訪れます。その背後にある基本的な動因は、経済と文化のブロック化現象です(南北米大陸、欧州+アフリカ、東アジア)。同時に、近々、新しい言語圏(漢字文化圏)が登場するからです。中国がその中心に位置する可能性が高いと思います。
日本は、そのとき、自らのアイデンティティを気候と風土にあったオリジナルな文化(衣食住)に求めるはずです。和のテースト(明治・大正、江戸時代に回帰)は、すくなくとも国内では当然のことになります。安全で健康な食生活を軸に、エスニックな東アジア文化がこれと融合するかもしれません。
<10年後の評価>
ほぼ100%完全にあたっている。世界を席巻している近年の「和食ブーム」(とくに寿司エコノミー)は、10年前にわたしが予測したとおりである。高齢化で、ケーキより和菓子(あんこ)が売れ始めている。また、フランスやドイツにおけるアニメや漫画ブームは、ほぼ完全に予見どおりに事が進んでいることを表している。
(3)アジア漢字文化圏の成立と英語文化圏の歴史的敗北
日本、中国、韓国は「アジア漢字文化経済圏」を編成するようになります。そのとき、韓国は母国語を表現する手段としてハングルを捨て、漢字言語圏に再編入されます。韓国人の「短気」はよく知られた事実です(その形質は若干ですが、わたしにも遺伝的に残されているようです)。
なお、米国では、ある時期からスペイン語が準公用語になり、20年後にはラテン文化圏に組み入れられます。ゲルマン言語圏が米国大陸で敗北を喫するわけです。英語圏は、欧州大陸に押しとどめられます。インディアンをいじめた原罪のツケを、500年後にピルグリムファーザーの末裔たちがようやく精算するわけです。
<10年後の評価>
この予測は、トレンド的にはほぼ当たっている。中国経済の台頭は、だいたいその予測通りに進んでいる。ただし、先を見すぎていたかもしれない。時代はさらに先に走っていて、中国の経済バブルの崩壊を予見する必要がありそうだ。
4年前に、「不確定要素は、中国・韓国・日本の関係悪化である」と述べた。この予言がぴたりと当ってしまっている。基本の「漢字文化圏生成」を、わたしは予測で放棄したわけではないが、漢字文化圏は言語的には英語文化に編入されそうだ。
(4)アジアからは国境が消える
10年以内に「東アジアFTA(自由貿易圏)」が形成されます。その結果、日中韓は産業的にはEUのような共通の土台をもった経済圏を構成するようになります。東アジアからは経済的な意味での国境が消滅し、日本の中心は北九州(福岡)に移動します。そして、日本はアジアの観光立国になります。もはや日本や知識と文化以外に売るものなくなるので、文芸・文化観光立国にならざるをえなくなるでしょう。
なお、個人的な願望ですが、韓国人、中国人、日本人が連合して創る企業組織が登場することを願っています。もちろん、欧米人の参加も大歓迎です。創造的な仕事に「国」という概念がなくなるかもしれません。そのときの世界共通語は、英語のままかどうかは未定です。多分そうはならないでしょう。常識はいつも覆されるものです。
というのは、使い勝手が良い「自動翻訳機」が完成しているので、英語の強みは失われるからです。もっとも、スペイン語と中国語が優勢になるかもしれませんね。
<10年後の評価>
前半は、(3)で述べた通りである。おもしろいのは、「自動翻訳機まがい」の事業展開がすでにはじまっている。最近のネット言語は、多様化(多言語化)の傾向にある。当時の大方の予想(英語が世界を席巻する!)に反して、結果はわたしの予言どおりになった。ネット使用言語の英語シェアは、あきらかに下がっている(証拠もある)。将来もそうだろう。技術が、言語相互のコミュニケーションの壁を取り払っている。
(5)第4次産業としての農業の復権
製造直販の波が農業分野に押し寄せてきます。すべての農作物のうち、穀類と根菜類を除いて、野菜の多くは日本ではいまから5年間くらいは輸入超過の時代を経験します。しかし、最終的(10年先)には、国内の農業改革(土地利用制度の変革と株式会社の農業分野参入)が実現した暁には、その段階で野菜の多くは国内生産に回帰します。生産直販が当たり前になりますから、農業は第4次産業(生産+流通サービス業)として復権します。
<10年後の評価>
予言通りに、事が進展している。わたしの予言内容は、世間では「6次産業化」と呼ばれている。
野菜に関していえば、中国野菜の汚染問題から、農産物が日本から輸出されるようになっている。戸別所得保障という、民主党の悪政がなければ、わたしの予言はさらに加速されていたはずである。
4年前のわたしの希望の通りに、2012年には再度の政権交代が実現した。そして、農業はこの国の基幹産業になりかけている。ローソンが店頭で有機・自然野菜を販売するなど、農業の復権が目の前に迫っている。
(6)日本を代表する大企業の多くは生き残ってはいないでしょう
トヨタ、ソニーをはじめとして、日本と世界を代表する20世紀型大企業は10年以内には苦境に陥るでしょう。それは、製品革新や組織進化の問題というよりは、世界のビジネスを支える組織形態が変わるからです。自立型の組織が連携する「知的連合体」がその中心イメージです。その意味では、米国最大の流通業である「ウォルマート」の流通支配も終わりを迎えそうです。
<10年後の評価>
HVのおかげでトヨタ自動車は復活したが、パナソニックやソニーは大苦戦している。この一年間だけは円安に助けられているが、シャープの現状をみると、予言は当たってしまったようだ。事業構造変化に乗れなければ、日本のハードメーカーはグローバルにはきびしい状況におかれるだろう。
ウォルマートは、いまのところ元気である。しかし、ディスカウントの時代は、世界的には終焉を迎えている。次世代の小売業が育ちつつある。わずか10年間で、日本の小売業は、三越伊勢丹、イオンや7&iグループから、ユニクロやカインズ、ニトリなどの新興小売業の時代を迎えている。彼らはどのように経営の舵取りを変えていくのか。
「2014年の大予言(2)」は、数時間後に追加します。