Yahoo!ニュースで(本日)、「若者「映画館離れ」割引でストップ、高校生1000円で集客2倍」(産経新聞 [8/19 07:55])が配信されていた。長い文章なので、のちに引用する。まったくの偶然なのだが、静岡サテライトの集中授業で、「映画館の価格付け」について講義していて、「1000円が適正よね」(小川)と発言したばかりだった。
「産経新聞」の記事を、最初の部分だけ引用する(全体はこの倍の長さがある)。
「全国のシネマコンプレックス(複合映画館)やミニシアターで、高校生をはじめとした若年層の入場料金を引き下げる試みが相次いでいる。シネコン大手はこの夏、高校生料金を500円引き下げた結果、一部店舗では以前より2倍以上の集客を記録した。シネコンとミニシアターでは上映する映画や客数が異なるが、共通する目的は若者の「映画館離れ」を防ぐことだ。
シネコン大手のシネマサンシャイン(全国13館)は今年3月から9月30日まで、高校生の入場料金を従来の1500円から1千円に引き下げている。運営する佐々木興業の運営課によると、キャンペーン前と比べ高校生の来場者は「3割程度増えている」といい、シネマサンシャインかほく(石川県かほく市)など一部店舗では2倍以上に増えているという。(後略)」
別の調査(2012年8月『日経消費ウォッチャー』)によると、一般1800円の鑑賞料金が1500円になっても、鑑賞回数はたいして増えない(19.1%)が、1000円まで下がると、55.3%は回数を増やすと答えている。
一般男女(~70歳)についてたずねている調査なので、これが若者だけが対象ならば「増える」という数字はもっと大きくなるだろう。若者の映画離れは、自然な鑑賞回数の減少ではなく、価格要因が大きいと推測できる。
この応用問題である。
「年齢別」の価格差別だけではなく、「上映作品」や「スクリーン別」に価格を差別化してみてはどうだろうか? 技術的な問題(発券のわずらわしさ)はあるだろうが、たとえば、インディーズ系の映画はそもそも上映機会がすくない。だから、全国興業でのロングランがむずかしいのだ。それならば、当初から1000円の価格設定で特定ファン層(若者層)をターゲットにしてみたらよい。データ上は、十分に集客が可能なはずである。
その根拠は、静岡集中授業のときに、「1000円が適正価格」と予言した理由でもある。静岡で授業を聴講していた溝口佳菜子(静岡SC一年生)さんがその証人である。
イノマネ一年生の坂本ゆみかさん(映画館上映が研究テーマ)が、プロジェクト研究時に発表していたデータ(発言)によると、「映画館は、約20%の収容率で損益分岐点に達する(利益が出る)」のだそうだ。だとすれば、映画の鑑賞価格を800円値引きして(=1000円に設定して)、集客を倍にできれば(損益分疑点の倍の収容率40%)、映画館としては十分に採算は取れることになる。
変動費などは、たいした額ではないだろう。わたしもときどき(年4~5回)映画鑑賞に行くミドルユーザーだが、観客は少ないよりもたくさんいたほうが賑わいもある。最近見た「風立ちぬ」(宮崎駿作品)などの鑑賞客層を見ていると、若者の映画離れなどあまり感じない。
あの大きなスクリーンだからこそ、ゼロ戦の飛ぶ姿が美しく映えて、臨場感を持って見られるのだ。自宅が大画面でスクリーンがどんなに大きくても、音響も映画館にはかなわない。VDDでは所詮は物足りないだろう。
調査データをすなおに信じると、やはり価格設定の要素が大きいと思う。「産経新聞」のその後に記事にも、その事例が具体的に示されていた。
映画配給会社と映画館運営会社の現在の取り組み(若者向けに1000円設定)は、正しい方奥だと考える。それをさらに一般化してほしいものだ。たとえば、地域差別価格、スクリーン上映作品ごとの差別価格など。