学部フィールドワークは、「ヤオコー花班」が優勝した。学生たちがヤオコーに提案した「枯れバラ交換システム」には、最終発表会に同席した全員が度肝を抜かれた。実験店舗の2店だけではあったが、学生の提案を本当に実施してしまうヤオコーの花部もすごいと思った。大島部長さんの心意気である。
学生たちが、食品スーパーのヤオコーで実施した「枯れバラ交換システム」とは、つぎのようなコンセプトである。事業としての目論見も、付加されていた。
わたしから、「ヤオコーさんの名前を出して、枯れバラのことをブログに書いていいですか」と問い合わせたところ、 「今後は、店舗数を増やして実験を繰り返してみます」と山崎トレーナーからお返事が返ってきた。安心してブログにアップさせていただくことにする。
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「枯れバラ交換システム」(企画提案書) 2012年12月(ヤオコー花班)
ヤオコー様とのミーティングの際に、大島部長に「『ヤオコーと言えばバラだ』と言われるようになりたい」と熱く語られた。私たちは「ヤオコー=バラ」のイメージを、スーパーであるヤオコーのお客様に与えるには、インパクトがあり、かつ花に興味がないお客様の興味もひけるようなハードルの低いプロモーションを提案したいと考えた。
そこで思いついたのが「枯れバラ交換システム」である。
「枯れバラ交換システム」とは、簡単にいうと、お客様が持ってきた枯れたバラを、無料で新しいバラと変えるというプロモーションである。
<テーマ>
「バラのヤオコーと呼ばれるための仕組みづくり」
<狙い>
・バラでのついで買いの誘発。(花売り場、店舗全体)
・日常にバラを飾るサイクルを創る。
<内容>(提案段階)
期間…毎日、
内容…枯れたバラ3~5本で、新しいバラを1本プレゼント。
また、枯れたバラは、ヤオコーのものでなくても構わない。
<このプロモーションのメリット>
① 「来店率のアップ」
まず、例えば「食材が切れたからヤオコーに行こう」という普段の買い物とは別のタイミングで、「バラが枯れたからヤオコーに行こう」と思うことで、「来店率のアップ」ができると考える。ヤオコーは様々な商品を扱っている総合型食品スーパーなので、他部門の売り上げアップも図れる。
② 「ついで買いの創出」
新しいバラを無料で手に入れることで、そのバラと組み合わせられる他の花を買っていくと考える。
③「持続的に花を購入するサイクルを創る」
ヤオコーでバラを買い、家で枯れたバラをヤオコーに持っていき、またヤオコーでバラを手に入れる。というサイクルを創ることによって「日常に常にバラのある生活」を提案することができる。
④「バラ=ヤオコーのイメージを創る」
経営力の強いヤオコーだからできる企画であり、他のどの企業も行っていない独自のプロモーションで、お客様に刺激を与えられ、「ざ・ばら祭り」を盛り上げられる。また、花全体ではなく、「バラ」に限定することにより、時間はかかるかもしれないが「バラ=ヤオコー」のイメージを創ることができると考える。
⑤「他店顧客の獲得」
このプロモーション最大の特徴でもあるのが、他店で買ったバラでも交換できる。というところである。そうすることにより、他店でこれまでお花を買ってたお客様がヤオコーに流れてくる、そして、サイクルに取り込めれば、ヤオコーの顧客になってくれると考える。
⑥「割引券などのコスト削減」
枯れたバラを使うので、割引券やポイントカードなどを作らなくてもよい。
本来、券を渡す段階から手間がかかるが、すでにお客様が「券」とするものを所持していることが、ミソである。
⑦「バラを買うハードルを下げる」
普段バラに対して、扱いにくいなどのイメージがあり、なかなか購買できなかったお客様でも、枯れると交換できる。という安心感を与えることによって、購買に結び付けることができる。
<デメリット>
①「コスト面」
バラ、告知のためのコストがかかる。また、ついで買いが生まれない場合、赤字である。
②「ゴミ」
枯れたバラを処理するための負担がかかる。
しかし、ついで買いが生まれると、費用対効果で効果が上回ると考えられる。
<ヒントとなった他企業のプロモーション>
「はなまるうどん」
・割引券を作らず、他店の期限切れ割引券を使うという斬新な考えをヒントに、
枯れたバラを使おうという考えが生まれた。
・この企画のメリットとしては、割引券を作るコストが要らない、
渡さなくとも、すでに財布に入っている。ということが考えられる。
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この企画提案書をもとに、ヤオコー店頭で、学生たちが
「枯れバラ交換」を実施してみた。その結果は、
<トライアル>
・日時…2012年12月14、15、16日。
2013年1月18、19、20日
どちらも期間はチャレンジ市の「ざ・ばら祭り」の月3日間である。
・場所…八王子並木町店と青梅店の2店舗の店頭
・内容…枯れたバラ1本に対して、新品のバラ1本を交換。
<結果>
期間…6日間
交換に来た人数…27人
交換したバラの数…27本
花のついで買い…9人
他商品のついで買い…22人
<評価>
ありがたいことに、ヤオコー様はこのプロモーションを、これからもしばらく持続させてくれるとのことだ。理由としては、
①お客様がとても喜んでくれた。
②コストが思ったよりもかからない。とのことである。
まだ、6日間しかやっておらず、長い目でみなければこのプロモーションの是非はわからない。
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<小川からのコメント>
学生からは、「枯れバラ交換」を「バラフェア」の時だけでなく、「毎日」実施するという斬新な案が提案された。その理由として、彼らは、
・期間限定でやると日常にバラを飾る生活を提案できない。
・毎日行うと、「バラ=ヤオコー」のイメージを、一層強く創ることができる。
を上げていた。
このドラスティックな提案が採用されるかどうかは未定であるが。ヤオコーの花部(大島部長)としては、学生たちが実施した「枯れバラ交換システム」を、さらに数店舗に拡大していくことを約束してくれた。テストデータを見てわかるが、ヤオコーとしての経済的負担は心配していたほどではなかった。
学生たちが予想したように、たしかに、花だけでなく、その他商品のついで買いも誘発していた。また、他の競合店からの売り場スイッチも見られた。斬新な提案だったが、確実に成果を上げることができたと言える。
学生たちには花(業界)の知識があるわけではない。何の予見がない学生だからこその提案だった。しかし、実施にその通りにやらせてみたら、きちんと結果は出せた。
実は、12月に実施した第一回目のテスト終了後は、「ついで買い」がほとんどなく、花班の学生たちはかなり凹んでいた。明けて新年の1月、3日間の「ざ・ばら祭り」では、今回のように大きな成果が出せた。