”i’m loving ‘it” マクドナルドのミッションは、「お客様にとってお気に入りの場所とスタイルであること」(HPより)。しかし、大手ファーストフード企業の中で、マクドナルドのCSは最低水準にある。業界の中で、同社の顧客満足度のランクが、昨年来、大幅に落ちている(JCSI未公表データによる)。
問題は、どこにあるのだろうか? 一時的な現象なのだろうか? マーケティング戦略に課題があるのだろうか?
マクドナルドの商品は好きではないが、原田CEOはもっとも尊敬する経営者のひとりである。大経営者が、戦略のミスを犯しているのだろうか?
先々週から、大学院の授業(マーケティング実行論)で、マクドナルドの「メニュー表の撤去」を素材に、マクドナルドの利用者と従業員を観察している。
大学の教室で、「マクドナルドが待ち時間を短縮する試み」(平均55秒から30秒へ)が、経営全般に与える影響をシミュレーションしてみた。その後で、マーケティング戦略の結果と実際のオペレーション効率の改善を見るために、市ヶ谷周辺の3店舗を継続的に観察している。観察は、これで二週目に入っている。
日本マクドナルドに関していえば、低いCS(顧客満足)とES(従業員満足)にも関わらず、高い業績(成長率、利益額)と結びついていることは、なんとなく皆が当然のように思っていることである。
同社については、優秀な経営者(原田泳幸CEO)による効率経営と、巧みなマーケティング戦略が功を奏して、創業者の藤田田氏時代からは考えれないような奇跡のカムバックを果たした。ところが、風向きが変わってきている。
6月以降、客数は伸びているが、客単価が大幅に下落。結果として、店舗当たりの売上高が減少している。公開されている月次データからも、そのことがわかる。10月に「メニュー表の撤去」を実施したあと、このトレンドに目立った変化はない。
カウンターからメニュー表を撤去することで(同時に、メニューボードやポスターの活用)、待ち時間が短縮され、客数増と客単価上昇(セットメニューへの誘導)が同時に達成できるはずだった。が、店頭での観察から察するに、少なくとも都心部店舗においては、原田戦略は結果を出していないようだ。
原田マクドナルドは、事業を引き継いで以降、第二の危機に直面している。前回の「パート従業員の残業処理問題」は、上手に乗り切ったが、今回は、得意のマーケティング戦略についての失敗につながりかねない。
現在のマクドナルドの事態は、かなり深刻だと睨んでいる。なぜならば、店頭を観察しているとわかるが、一部の店舗では、カウンターの従業員の表情から、「笑顔」が消えているからである。従業員が、ハンバーガーとフレンチフライを提供する”マシン”(機械)と化している印象を受けるのだ。
店舗を改装して大型化したことで、客数は増えた。しかし、同時に実施したプロモーションのやりすぎ(クーポンの多用)で、客の質がしだいに落ちて行っているかもと懸念する。
学生たちの観察と議論は、まだ継続しているので、現在進行してしている調査を紹介して、本日のブログを終えることにする。
正式な名称はわからないが、大学院生たちがいま継続的にモニタリングしているのは、市ヶ谷店(大規模店:約160席?)、神楽坂店(中規模店:約100席?)、飯田橋店(小規模店:約60席?)である。
観察時に記録している店舗指標は、客数、客単価、席数(+キッチンの広さ)、トイレの清潔度など。消費者については、買上点数(セットメニュー比率)、待ち時間、行列の長さ、離脱した顧客の数など。従業員に関しては、作業動線、作業分担、顧客対応(あいさつ)などである。
これから、北九州空港(スターフライヤー本社)まで、打ち合わせのために日帰りする。