本日から、「実践的JCSI活用セミナー」(東京~名古屋~大阪)が始まる。JCSIの地方巡業である。「布教活動」とも言う。おかげさまで、各会場ともに定員の倍以上の申し込みがあった。東京マラソン同様に、抽選になった。外れた方のために、講演の概要を紹介する。
これまでのCS関連の講演では、JCSIの仕組みと調査結果の解説の話が多かった。
もともとが製造業に比して合理化が遅れているサービス業の生産性向上を目的に、日本版顧客満足度指数(JCSI)が開発されてきたからである。最初に、国家プロジェクト(JCSI開発)への個人的な思いと社会的な背景の話を行う(第一話)。
今回の連続講演では、そうしてデータ解説を超えて、経営課題の解決や事業戦略の立案のために、顧客満足(測定されたCS)にどのような役割を与えることができるのか。CSの戦略的な意味づけを行ってみたい。8月30日に、日本経済新聞に掲載された「JALの植木社長とのインタビュー」がその骨子になっている(第2話)。
わたし自身、6年前からJCSIの開発とその普及に携わってきた。この間、複数の大手企業の「CS調査システムの設計」と「サービス改善活動の社内浸透」のコンサルティング活動にも従事してきた。その経験を踏まえて、マーケティングを包含した戦略課題として、CS向上の意味を問い直すようになっている。
結論は単純である。巷間で言われているように、CS(顧客満足)とES(従業員満足)とProfit(会社の業績)は、長期的にはまちがいなく連動している。したがって、事業経営とマーケティング活動の羅針盤(コントロール指標)としてCSを位置づけることができるというものである。ただし、その場合は、幹部トップによる戦略立案と現場でのCS改善運動を整合的に行うことが課題になる。
講演の後半では、ふたつの事例を紹介する。ひとつは、BtoCサービス業の事例。もうひとつは、BとB製造業のサービス部門(販売会社)の事例である。
最初のケースは、昨年度の「CSフォーラム」からのものである。3年間継続して、JCSIで高いCSスコアを獲得している「スターフライヤー」のサービス実践を紹介する。これは、サービス業のCS向上についてのブランド戦略とオペレーション、顧客対応の事例である。その構造について解説する(第3話)。
日本の製造業でも、サービス部門(アフターフォローなど)からの収益は無視できなくなっている。製造業においても、組織デザインとCS向上活動は、結果として連動している。この仮説(サービスプロフィットチェーン)を、大手自動車メーカーのCS推進活動の事例から説明する(第4話)。
もくじ
第一部 顧客サービス戦略の今日的な課題
顧客満足度の測定とCS向上
第二部 日本版顧客満足度指数(JCSI)の事例から
B2B企業におけるCS向上(H社CS改善活動)