本ブログの「待ち時間の秘密」(『Big tomorrow』連載第30回、2011年1月号)で、つぎのような記事を書いた。そのときのリード文は、「「お客を待たせない」というのは、企業にとって大事なサービス。心理的な意味合いもあるが、じつはそれよりももっと重要な理由があることが判明!」だったが。
わたしが主張したとおり、待ち時間による機会ロスをさらに短縮することに挑戦するつもりなのだろう。本日のネットニュースで、「マックがメニュー表を廃止した」というニュースが流れている。詳細を紹介してみる。
「マックのメニュー表廃止がネットで物議 お年寄りが困る、不便になるなど不満が次々」
2012年10月2日(火)19時44分配信 J-CASTニュース
マクドナルドがレジカウンター上の「メニュー表」を廃止し、それがネットで物議をかもしている。
不便になるという人のほか、話すのは苦手という人やお年寄りが困る、といったさまざまな不満が出ているが、日本マクドナルドは「待ち時間の短縮のため」と意図を説明し、元に戻すことはないようだ。
「そんな視力検査みたいなこと嫌だよ。メニュー見えないよ」
マクドナルドでは2012年10月1日から、全国の店舗でレジカウンター上に置かれる「メニュー表」を廃止した。メニュー表はA3程度の大きさで、全てのメニューと値段などが書かれている。お客はレジに着いてから、これを見ながら注文を決めるというのが、これまでの流れだった。
今回それが廃止されて、お客はレジ上方に設置されたメニューボードと呼ばれるパネルや、通路に張られたポスターに書かれたメニューを「メニュー表」がわりに使い、並んでいる間に注文を決めるかたちになった。レジでは伝えるだけというわけだ。
なお、ポスターはすべてのメニューを網羅するが、メニューボードに並ぶのはセットメニューや季節商品、「100円マック」などで、全部載っているわけではない。
変更を受けて、ネットでは賛否両論が巻き起こった。
「ついにマックにメニューボードが!これでレジに立たずとも(並んでいる間に)メニューを吟味することができる!」
「先に携帯みてクーポン選んでからいくよね。メニュー表などいらぬ」と支持する声もあるが、多くは不便を訴えるものだ。
店員と対面で会話するのが苦手という人が、
「いつもマックで注文するときは、メニュー指さしながら喋らないようにしてたのにこれじゃあ行けない」
とつぶやいたほか、
「そんな視力検査みたいなこと嫌だよ。メニュー見えないよ」
「レジ上のメニューにわたしの頼みたいのなくって、しかも名前とかオボエテネーヨ」
とメニューボードとポスターの見にくさを指摘する声が相次ぎ、ついには、
「メニューが見にくいのって焦らせて高いの買わせるためだよね?」
という憶測まで飛び出した。
実際、店頭で通路に張られたポスターの文字の大きさでは、列に並びながら首を横に向けて確認するのは少々難しい印象を受ける。メニューボードの値段も写真が目立って探しにくく、レジ前で見上げてようやく自分の欲しい単品メニューの記載がないと確認できた。
また、より深刻な問題を指摘する向きもある。
「レジで悩まられると急ぎの人達に迷惑がかかる」
それは、お年寄りや障害者など、耳や目が弱かったり、話すことの難しい人が注文しにくくなるのではないか、という心配だ。
しかし、マクドナルドの広報担当は「お声かけいただければ、『メニュー表』のご用意はあります」という。また、撤廃の意図についてはこう説明した。
「お客様の並んで待つ時間のストレスを減らしたい。ゆくゆくは、列に並んでいる間にメニューボードや通路のポスターで注文を考えることに慣れていただければ」
同社の原田泳幸社長は以前から「レジが30秒短縮されれば、売り上げが5%伸びる」と発言している。今回の変更もレジで選択に悩む人を減らすことで、待ち時間の短縮を狙っているようだ。
実際、元店員と思われる人物がツイッターで、
「レジの前のメニューだけを頼りにレジで悩まられると急ぎの人達に迷惑がかかるんだよね(原文ママ)」
などと発言している。
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本日の小川ゼミでは、この話題を議論してもらう。マックの原田社長が主張している「売上5%アップ」の根拠は、わたし(小川)がコラムに書いた理屈と同じである。
参考までに、再度「待ち時間の秘密」から、続きを引用してみる。
「その驚くべき理由とは、いったい…!?」、、、
お客を待たせる時間が1秒長くなると、企業にはどんな影響があるのか?
注文してから、商品が出でくるまでの待ち時間。急いでいるとき以外はたいして気にはならないが、じつはそれが売上に大きく関わっている。
実際、マクドナルドでは、商品提供までの時間を1秒短縮するだけで売上が8億円増えるとか。いったいどうして?
「待ち時間が長いと店頭に客溜まり(行列)ができ、急ぎのお客が帰ってしまい、販売機会を失ってしまうのです。また、並んだお客の満足度も下がり、リピート率が落ちる。長い待ち時間は、二重の意味で売上を減らすのです」
と解説するのは小川孔輔先生。ただ、たった1秒で8億円も差が出るというのは、やや大げさでは?
「マクドナルドの売上は年間約4000億円。売上なら0.2%、客数なら1000人に2人が逃げると、8億円の減収になる計算。1秒の遅れで1000人に2人の客数減なら、十分にありうる話だと思います」
1秒につき売上が0.2%落ちるくらいなら、たいした影響はないという考えは、非常に危険。1秒の遅れが10秒、30秒…と積み重なって1分になると、売上は12%落ちます。お客の数にすると、8人に1人は減る計算に。モタモタしている間に、お客はどんどん逃げていくのです。
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原田会長の言う「5%」が、わたしたちが調べた「30秒で6%」という数値と符合している。
しかしながら、メニュー表を廃止することで、日本マクドナルドは、本当に5%分だけ、売上を伸ばすことができるのだろうか?
本日、教室で討議をしてみよう!