週末(土日)は、学生たちと米沢に出かけていた。昨年来、カインズ班の指導を担当している小川浩孝さんが、今回は松川弁当店班のお手伝いに駆けつけてくれた。9月発売予定の新製品を、「ヤオコー駅弁フェア」で販売するための商品企画会議である。
食品スーパーのヤオコーは、9月から翌年3月までの7ヶ月間、月一回の週末(土日)に、全店舗(118店)で駅弁フェアを開催している。駅弁フェアへの出品点数は、一回当たり約30アイテム。今回は、松川弁当店と法政大学(小川ゼミ)のコラボ弁当を出品することになった。きっかけは、実にひょんなことからである。花部の大島部長!ありがとうございます。
一回あたりの発注数は、週末の土日二日間で、毎月1000~2000本。学生が企画した商品を、実際に販売できるわけで、松川弁当店さんにとっては、願ってもない拡販のチェンスである。はじめの9月にうまく売れれば、翌月も再発注がかかる。とにかく導入月が勝負である。
昨年からフィールドワークに取り組んできた学生にとっては、JR(東京駅や大宮駅、山形新幹線内の車内販売)とは異なる、新しい販路での商品企画へのチャレンジになる。勉強の効果も大きい。
昨秋(芋煮ベース)と今春(すき煮ベース)は、どちらも松川弁当店が得意とする、米沢牛を使った「牛肉弁当」の系統の商品だった。地元食材を利用して、色彩と地域性を前面に押し出した。
おかげさまで、秋も春も、かなりの数を売ることができた。2011年の秋は、一万本を販売できた。「山形プレミアム弁当」(春秋version)は、東京駅ではリピーターがついている。春バージョンは品切れをすることが多かった。
山形プレミアムの唯一の欠点は、食材にこだわった分だけ、日持ちがしないことである。芋煮(秋)も、すき煮(春)も、作ってから24時間しか日持ちがしない。とてもおいしいのだが、処分までのリードタイムが短すぎるのだ。
早朝に、米沢駅前の弁当工場で作って、午前便か午後便で3回から4回に分けて、山形新幹線で東京駅まで運ぶ。そして、その日の夜10時までには売り切らなければならないのである。
今回の課題は、日持ちのする駅弁をメニュー開発することが条件になる。食品スーパーで売るからである。
松川弁当の商品は、卸(日本フーズ)を経由して、ヤオコーにはセンター納品される。そこから各店へ配送仕分けされるので、「48時間」(二日間)日持ちする商品でなければならない。さらに、山形プレミアム弁当のように、価格帯は1200円では高すぎる。そこからは下の価格帯を狙わなければならない。林社長の見解では、800~1100円の間である。
学生たちは、事前にヤオコーを訪問して、商品担当部長の野塙さんに面談してもらっていた。駅弁フェアの、出品商品の品種と価格帯、ロス率に関するデータを会議に持参してきた。まずは、チラシに掲載してもらえるような魅力ある商品の提案が課題になる。
なお、フェアに出品する弁当は、すべて買い取りである。売れないとなると、かなりのロスになる(~15%)。二ケタ以上のロスを出せば、一回目にオーダーが入ったとしても、二回目以降は、追加発注が全く来ないことも考えられる。
実際に、昨年の実績データを見る、そうした会社も少なくない。初回の購入率と魅力度(店頭でのインパクト)が大事になる。
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松川弁当班の学生たち4人は、土曜日(7月14日)の夜行バスで東京から米沢までやってきた。わたしと小川さんは、前日に山形新幹線で先乗りしていた。われわれは、米沢の秘湯・五色温泉(宗川旅館)に宿泊。朝5時にバス便で到着していた学生チームに、米沢の弁当工場で合流することになった。
今回の企画のポイントは、松川さんが得意とする牛肉で行くのか、それとも、これまで松川が扱っていない「鳥」「豚」に挑戦するかだった。もちろん、地元産の鳥や豚を扱うという前提ではある。
学生たちが企画提案してきたのは、「鳥肉3種類の味付け弁当(仮に、鳥三味)」と「牛肉のひつまぶし弁当」だった。
「米沢ラーメン弁当」(?)は、ヤオコーさんにも、林社長にも、即刻に却下されていた。これはないなよな。わたしもそう思った。
午前中の企画会議では、学生たちがなかなか最終決断ができないでいた。今回は鳥で行くのか、それとも、引き続き、牛にこだわるのか、である。
学生たちの企画書にしたがって、林社長が試作してきていたのは、「鳥肉のあぶり焼き(一切れ30g×3個)」だった。試作用の鳥はブラジル産なのだが、食べてみると、なかなかの美味である。これが採用となれば、ブラジル産に替えて、山形産の地鳥を探してくることになる。
課題は、コスト的な配慮である。胸肉だけを「ポーション買い」ができるかどうか。そうできない地鶏だと、原価が跳ね上がることになる。そこがクリアできれば、おいしい鳥飯弁当ができそうだった。
小川さんの言葉が決め手になった(と、わたしは見ている)。「(鳥弁当で行く場合は、)見た目からして、圧倒的な驚きがないといけない」(この言葉で、牛肉の選択肢が消えた!)
弁当工場内の会議室で、林社長の試作品(鳥肉1切れが30g)を、地元の副食材と合わせて並べて行った。プレミアム弁当の春ベージョンで人気を博した、梅こんにゃく(3個串刺し:小川先生の発案)、ゆず大根(おしんこ)、シイタケなどがトライアル作品では選ばれた。その他、きんぴらごぼうを鳥肉の下に敷くことが決まった。
「乗せ弁」タイプ(ご飯を敷いて食材を乗せて行く方式)なので、ご飯は、山菜の炊き込みとショウガ味(やや薄め)を候補として準備していた。どちらにするのかは、現在も検討中である。そこに、焼き方と風味が異なる3個の鳥肉(30g)を乗せると、かなりダイナミックな弁当ができる。なんとなくではあるが、KFCの骨つき肉を3本乗っけた感じになる。
弁当のパッケージは、栗ごはんで使用している「編み竹風」のものを使用することになった。舟形の中敷きを敷いて、ふたも同じ天然素材である。出来あがりは、田舎風においしく見えた。
この鳥めし弁当には、プレミアム弁当と同じようなテイストのかけ紙を使うことにした。東京駅や大宮駅では、山形プレミアム弁当の隣に並べてみる。そうすれば、お客は、1200円の「山形プレミアム弁当」(大地の恵み、牛肉)と、900円の「極鳥めし弁当」(新製品、鳥肉)から選択することができる。
ちなみに、鶏肉は、ゆず胡椒、バジル風味、味噌風味など、3種類(未定)のものに、さらに炭焼きをするかあぶり焼きにする。香ばしく仕上げると、単にビッグなだけではなく、弁当のふたを開けたときの嗅覚にも訴えることができる。
さて、このあとは、9月の発売に向けて、つぎのような作業手順になる。
(1)具体的に、ブランドネームを決める。
(2)鳥弁当の内容(副食材)を固める。
(3)細かな原価を計算して、価格を確認する。
(4)見栄え(かけ紙)と風味(味付け)をさらに検討する。
これを、米沢と東京でやりとりをしながら固めていく。
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ヤオコーの駅弁フェアへの出品商品は、東京駅・大宮駅、山形新幹線内でも発売されることになります。
松川弁当店が初めて企画した「鳥めし弁当」である。松川弁当店は、鳥弁当やさんではない。だから、思い切った発想からおもしろい弁当が制作ができたように思う。昨日は、帰りの山形新幹線で、こっそりひとりで試作品を食してみた。
日本にたったひとつしかない「松川弁当店製の鳥めし弁当」である。
まずは、ふたを開けて、鳥肉の大きさと多さに感動する。実にダイナミックな鳥弁当だ。もしかすると、鳥肉が嫌いな口には、ちょっと怖い感じがすると思う。たぶん、隣の部屋の平石先生は、逃げたくなるような量目と色合いである。
鳥弁当で900円を取れるバリューが提供できそうではある。食してみて、ちょっと感動ものだった。