ベトナム視察は3日目になった。昨日は、ハノイ郊外にある工業団地を視察した。この団地には約100社入っているが、9割は日系企業である。蛍という日本食レストランでお弁当が出た。まるで日本だ。セットできている。
キヤノン、ソニー、TOTO、ヤマハなど、名だたる大手メーカーに伍して、サクラ工業(浜松市)のような部品メーカーもベトナムに進出してきている。
サクラ工業は、中堅のマフラー専業メーカーである。90年代後半から2000年代初頭にかけて、ベトナムとインドネシアでは、二輪車市場が急成長しはじめた。当初は、日本から完成車を輸出していたが、親会社のヤマハモーターが現地生産を開始。サクラ工業も一緒にハノイに進出した。
この会社は、台湾、ベトナム企業との合弁である。従業員は500人。日本人駐在は4人である。現地人100人に日本人ひとりが基準のようだ。20倍の賃金格差だから。
サクラ工業のような部品メーカーが、浜松近辺からハノイの工業団地に進出して来ている。ヤマハモーターが、工業団地内の部品メーカーのバーツを、1時間置きに取りにまわる。うまくできたピックアップの仕組みである。地域内のJITシステムである。
日本企業がセットで進出しているのは、ジャカルタ郊外でも似たような状況らしい。国内の販売が下降線を描いているなかで、モノづくりのために日本を離れて、東南ジアの国々に技術を移転している。その現場を見ている。
本体のヤマハモーターは、ベトナムに3つの工場を持つ。ベトナムでは、年間約300万台強のバイクが売れている(保有2千万台、人口8千万人)。本田がトップで200万台。ヤマハは100万台で2着である。やや離れた二番手メーカーではあるが高品質でイメージの良い市場をつかんでいる。
町を走っていても、バイクだらけだ。地下鉄も路面電車も走っていない。バスも機能していないから、バイクが唯一の輸送手段になる。
ホンダが圧倒的なプレゼンスを誇る。二輪車のことを、ベトナムやベトナムでは、「ホンダ」と呼んでいるらしい。ホンダの強みは、価格と積極的なモデルチェンジと新しいモデルの頻繁な投入である。
それに対して、ヤマハは、有名女優やスポーツイベントを使っタプロモーションを積極的に展開。ファッショナブルでスポーティーなイメージで人気を博している。若者の間では、独自のポジショニングでプレミアムブランドと見られている、。
系列販売店の数は、500程度で変わらない。ヤマハもホンダも、バイクの価格は、6万円から20万円までが売れ筋だ。年収が12万円だから、その半分を投じないと買えない値段である。クレジットは普及していない。キャッシュだから、親がかりでないと買えない値段である。将来はわからない。たぶん、買い方が変わるだろうなあ。
ベトナムでは、日系企業が健闘している。親日的な雰囲気がある。しかし、働くとなると別である。給料のわずかな差で転職する。日系企業はき真面目だから、賃金の約2倍と言われる、福利厚生費、4ヶ月産休保証など、きちんと義務を果たす。地元企業は、税金さえまじめに支払わない。ころころ変わる国の制度に苦慮している。
しかし、07年ごろ隆盛を極めた、品質の悪いまがい物の中国産コピー二輪車は駆逐された。品質とアフターサービスの勝利である。まじめに、対応してきた日本メーカーの寡占支配は揺らいではいない。消費者の便利さや生活提案を寡黙に実現することだ。
結局、ベトナムで日本メーカーが戦っているのは、競合や制度に見えるが、対象は豊かになりつつあるベトナム消費者である。