新学期がはじまって2週間になる。今年の学部ゼミでは4社と組んで、フィールドワークの活動がはじまる。「マーケティング・フィールドワーク」とわたしが呼んでいる学習活動は、小売店舗かサービス施設を借りて、学生たちがチームを組んで、マーケティングの視点から現場観察をする活動である。
学生にとっては現場を見ることで、座学では得られないビジネスの現実をのぞき見ることができる。受け入れてくれる企業にとっては、学生というフレッシュな視点から、とくに消費者目線で事業や商品やサービスを見直したり、新しい商品サービスを発想する機会を提供してもらえるメリットが期待できる。
フィールドワークの活動は、前期と後期で、全部で9か月にわたる。企業とのマッチングは終わっている。カインズホーム、松川弁当店、ヤオコー、デジタルサイネージ(提携先未定)。学生の活動は、もちろん無償である。アルバイトではない。
フィールドワークの班組で、ゼミ生が4チームに分かれる。実際の活動は、店頭観察にはじまり、必要ならば調査設計をして、そのデータを分析する作業が前期(5月~9月)の課題になる。中間発表までは、企業の担当者を交えたチーム内での討論や仮説の検証を行う。
後期(10~1月)は、売り場やサービス業務の改善提案、実際の商品開発、プロモーション企画を立案するだけでなく、実際に商品や売り場を作った結果をもって最終発表に臨む。
昨年度の反省から、今年からは、フィールドワークの事前学習(講義)を取り入れることにした。それが明日である。今年度は、新しい試みとして、3つの講義科目を準備した。
(1)流通業の基礎知識を叩き込むこと(小川孔輔が担当)、
(2)商品開発の実際を学ぶこと(小川浩孝さんが担当)
(3)フィールドワークの心構えと行動指針の理解(最上ゼミ長が担当)。
小川浩孝さん(元J&Jのブランドマネジャー、マーズではディレクター)には、『28歳の仕事術』(日経)を素材に、商品開発の実際を講義していただくことにした。わたし(小川孔輔)は、「販売革新」の3月号を素材に、流通業の基礎知識とビジネスモデルを講義する。
ゼミ長の最上くんは、昨年のように、調査中に学生が提携企業に迷惑をかけないための事前説明をしてもらう。
以下は、小川(孔輔先生)の簡単なレジュメである。
「流通業界の基礎知識」(小川先生が語る業界事情)
1 流通業界の仕組みと現実
(1)GMA(総合スーパー)と百貨店はなぜ凋落したのかを考えてみよう。
(2)ワンストップショッピングの嘘(サミットストア元会長、荒井伸也説)
(3)小売り業界の栄枯盛衰
2 日本の流通業界の相関図
(1)商社と小売りグループの関係
(2)独立系の会社とメーカーはどこに?
(3)変わる流通チャネル
3 世界と日本の小売業
(1)世界の小売業トップ10
(2)日本にはなぜ外資小売業(カルフール、テスコ、ブーツ)が根付かないのか?
(3)世界の中の日本の小売業
セブン&アイグループ: セブンイレブンがなけれが、ふつうの小売りG
イオングループ: 何でもあるが、収益性は高くない
ユニクロ: ビジネスモデルはユニークか? 柳井会長がいなくなれば、、、
無印良品: 意外にも海外で検討している理由を考えてみよう
ヤマダ電機: この会社には本当に未来があるのか?
4 専門用語を学ぼう
(1)チェーンストア経営の用語集
(2)業種、業界、フォーマット(業態類型)
(3)基本のマーケティング用語とマーチャンダイジングの基礎
(4)売り場と販促の基礎知識
(5)計数管理の基礎