書斎の机に座っている。目の前に、秋田県産の「森岳名産 じゅんさい」が鎮座している。秋田の母親から送られてきた瓶詰である。ラベルを忠実になぞってみる。「純国産 東京電電株式会社森岳支店 森岳食品事業部 酢酸使用」とある。頭を抱えている。食べるかどうか、?
見た目は、そんなに悪くはない。ビンの底に沈殿している寒天状の若芽は、弾力を失っていない(ように見える)。しかし、大きな問題がある。このビン詰めには、賞味期限どころか、製造年月日が入っていないのだ!
わたしの記憶はあいまいである。たぶん昨年の秋ごろ、きりたんぽシーズンの前に、宅配便で送られてきた(にちがいない)。母親の実家は、森岳食品の所在地「秋田県山本町」にある。そこには、天然のじゅんさい池があった。
もともとが大地主だった「羽立の家」(おふくろの実家があった地名)では、田圃を「じゅんさい池」に改造していた。当然、高級品のじゅんさいを栽培して、缶詰や瓶詰にして販売している。そのうちの1本だろう。3本ほど送られてきたうちの2本は、すぐに「酢の物」にするか、汁物に浮かべて食したはずだった。
なぜか1本だけが、一昨日、年末恒例の「食品庫整理」(床下収納庫)で発見されてしまった。出てくくるは、出てくるは。秋田県産品のオンパレードである。
・JForestマーク 秋田特産(自家用) きのこ (品名 キムタケ この部分は手書き!)
委託加工 仙北東森林組合 (住所省略、サンプル加工 この部分はマジックで!)
・委託加工品 ふき (表示はこれだけ!)
二ツ井特産加工場 代表 成田則夫 (住所省略) 固定量270g
実は、これ以外にも、旅行のお土産とおぼしき「ブルーベリージャム」「リンゴペースト」など、地方の特産品はあったのだが、いずれも「製造日」と「賞味期限」が明記されていた。だから、ビニール袋に入れて、捨てたものはまったくなかった。
秋田県産の「(サンプル)委託加工品」だけが、例外だった。じゅんさいに、名前を知らないキノコに
、二ツ井のふきである。いつ入手したのか、怖くて手がでなかった。もしかすると、32年前に亡くなったおやじ(小川久)が、山の中からとってきて、勝手に缶詰にしたものかもしれない。
父親は、死ぬ前に、たくさんのタケノコの缶詰を残していった。細い姫竹である。春になると、山中に分け入って、たくさんの姫竹を採ってきた。
父が取ってきたタケノコを、(母親とわたしたち兄弟が)青い匂いがする竹皮をむいて、お湯でゆがいたものだ。あまりに量が多かったので、近くの加工業者に委託して缶詰にしてもらった。大量だったので、父が亡くなってからも5年間ほどは在庫処分ができなかったほどだった。
娘とこの話をしていたら、「お父さん、自家製のキノコやタケノコを缶詰にするのは、全国でも秋田県だけらしいわよ」と教えられた。そのことを知らないのは、秋田県人だけだったようだ。
わたしは、昔から山で採ってきた山菜やキノコやタケノコは、余ったら缶詰にするものだとばかり思っていた。だから、「そんなのは秋田県だけ」にはびっくりだった。
そうなのだ。だから、秋田県産の缶詰には、製造年月日も賞味期限も書いていないのだ。きっと、秋田県には、特別な県令(法律・条令)があるにちがいない。どの缶詰にも、「サンプル(委託品)」と書いてあるのは、食品衛生法を逃れるための便宜なのかもしれない。
おかげで、わたしはいま、暗い床下の食品庫に何年も眠っていた、じゅんさいのビン詰めの保存状態をチェックしている。ビンの中で浮いている水の様子から、じゅんさいを捨てるべきか、お吸い物に使うべきかどうか、大いに迷っている。
そうそう、一昨日は、残り物の食材で、娘の協力を得て、「きのこカレー」を作った。食糧庫検査のあとで行われる、恒例の年中行事である。
親しい友人たち数人には、そのときの様子をメールで知らせておいた。恥ずかしながら、ブログ読者の皆さんにも、メールの内容を公開してしまう。
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こんばんは。メリークリスマス!(サンタさんのマーク)。
こんな日には、自家製のきのこカレーを作ります。野菜たっぷり、冷蔵庫整理に貢献しました。
追伸: 寝る前に、説明が長いですよ。有閑シェフの備忘録です。きのこカレーは、恒例の冷蔵庫整理の副産物。娘とふたり、食料庫を大掃除。半端ものの調味料や使い途中の食材をぶち込んで、2時間かけて、とろ~り、とろとろ。
こくまろ、バーモントカレー、ルーのカケラもいろいろと。お肉も、空揚げ用の半端もの、ミンチ、豚バラの残り、なんて入れてたら、量目が増えて、鍋を大きいのに変えるはめに(笑)。野菜は、ジャガ芋がないので、タマネギを多めに。冷凍庫の中の!ぶなしめじとエノキダケ。ついでに、セロリを1本、みじん切り。
かなり!おいしくいただきました。明日も、朝カレーになりそうです。わん(いぬのマーク)。おやすみなさい!
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このとき、食糧庫の食材は、すべて賞味期限を確認してから、カレー鍋に投入した。調味料は、基本的には、賞味期限から1年以内ならばセーフ。インスタント系の食材は、賞味期限から数か月以内ならばOKとした。
さきほども、一昨日に処分しなかった「チャルメラ」の2011年9月賞味期限のものを食してみた。いまのところは、本日までも大丈夫のようだ。
さて、質問である。いろいろ自分のことを例に挙げたが、みなさんは、賞味期限から何か月以内ならば、その食品を使うだろうか? 人によって、基準がけっこうちがうのではないだろうか?
綾小路きみまろは、漫談のなかで、「中高年 鼻で確かめる賞味期限」と言っていた。わたしの場合も、それに近いところがあるかな。皆さんは、、、
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参考: じゅんさい
スイレンなどと同じように葉を水面に浮かべる水草である。澄んだ淡水の池沼に自生する。若芽の部分を食用にするため、栽培されている場合もある。 日本では北海道~九州及び南西諸島(種子島・沖縄島に分布するが、すでに絶滅した地域もある。日本国外では、東南アジア~インド、アフリカ、オーストラリア、アメリカ等に広く分布する。
多年生の浮葉植物。葉は互生、楕円形で、長さ5~12mm、裏面は紫色。葉柄は裏側の真ん中に着く盾形であり、ハスの葉と同じ付き方である。地下茎は水底の泥の中にあるが、そこから葉柄をのばすのではなく、茎が伸びて水面近くまで達する。秋に地下茎の一部は、養分を貯蔵して越冬用の殖芽となる。この茎からまばらに葉柄をのばし、その先に葉をつける。茎の先端の芽の部分や若葉の裏面は寒天質の粘液で厚く覆われ、ぬめりがある。花期は6~8月。花は茎から水面に伸びた柄の先につき、直径1~1.6cm。花弁・がく片は3枚ずつで、スイレンの花を細くしたような姿だが、花弁は紫褐色であまり目立たない。
寒天質で覆われた若芽は日本料理で食材として珍重される。ジュンサイは秋田県の郷土料理とされ、同県の三種町は生産量日本一である。 主な用途として、次のような料理に用いられる。 酢の物吸い物みそ汁スープ(西湖)また、北海道七飯町にある大沼国定公園には、大沼三湖のひとつである蓴菜沼があり、ジュンサイの瓶詰は大沼国定公園の名物として売られている。
なお、私有地の池で栽培されることが多いため、採集に当たっては確認が必要。