マウスピースの効用

 わたしは歯ぎしりがひどい。下の歯が大きく削れている原因が、ストレス由来の「いきみ」にあるらしい。一か月ほど前、オリオン歯科の南先生のお薦めで、歯形をとってマウスピースを上の歯に被せることにした。顎関節症にもかかっている。



 「緩衝材として歯を保護する役割もありますよ」との女医さん(南先生)の説得を受け入れた。櫻田院長先生から歯ぎしりを指摘された時は、「まあ、いずれは、、」とやんわり先延ばしにしてきたのものである。美人の先生にはめっぽう弱い。南先生は性格がとてもかわいい。「おじさん」が入ってきた証拠である。
 それはそれとして、マウスピースを被せて寝るようになってから、顎の動きがよくなった。昨日の診察でも、顎を動かしても「こきこき」鳴らなくなくなったことを確認してもらった。南先生の見立てによると、顎の関節が円滑に動くようになったかららしい。
 マウスピースをすることで得られた機能的な効果より、「歯が削れなくなった」という安心感が、安眠や食物を噛むときの安心感につながっている気がする。心理的な面からの治癒効果だろう。

 聞いてみると、わたしの周囲にも、「マウスピース」の装着者がたくさんいることが分かった。小川順子さん(花プラス社長)、林教授(西安交通大学教授など。関西系が多いな(笑い)。一見して、ストレスと無縁そうに見える人たちである。
 本当は、心理的な要因ではなく、遺伝形質のような身体的な要因が、あごの関節の不具合や歯ぎしりの原因かもしれない。結局は、いまだに本当の病因はわからない。
 マウスピースを装着するようなってから、苦痛から解放されて幸せな気持ちになっている。ところが、マウスピースにはひとつだけ欠点がある。水を張ってある容器の洗浄がめんどくさいのだ。

 朝起きた時点で、洗面所に向かう。歯磨きと同時に、数年前に学生たちから誕生日にプレゼントされたメガネクリーナーのなかにマウスピースを放り込む。睡眠中に唾液が付着しているので汚れている。この小型洗浄マシーンは、紫外線照射の優れものである。わずか1分で、メガネフレームやマウスピースがピッカピカになる。
 ただし、容器内の水を清潔に保たなければならない。これがけっこうめんどくさい。マススピースを水洗いして、さらに一分間、わんこのようにじっと待たされる。「歯磨きが30秒」のわたしは、せっかちである。何とも言えない、この微妙な1分の間が、手持ち無沙汰で辛いのである。
 どなたか、マウスピースの洗浄器を開発していただけないだろうか? ちなみに、わたしのものは、メガネフレームの洗浄用なので、そもそもが重たい。洗面所ではかなり場所をとってしまう。容器がどんと構えて、エバっているように見える。