学生たちの読書感想文を読んでいた。ふた月に一度、指定された図書を読んで、「A42枚」にまとめてもらう。先月の課題は、ブログでも紹介したサイゼリヤ正垣会長の『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』である。
ゼミ生24人分の感想文を読んで、全員のレポートに赤ペンを入れる。いつもの添削指導なのだが、今回は「おやっ」と思うことがあった。企業名の「サイゼリヤ」を「サイゼリア」と誤記している学生が24名中3名もいたことだ。
200ページ分のいたるところに店名が出てくる。もちろん、正しい表記は「サイゼリヤ」である。全国に約千店舗。利用したことがない学生はひとりもいない。看板も街中の至る所にある。それにも関らず、社名の誤認率が15%もあるのだ。これは、異常なことである。
ためしに、グーグルで、誤記の「サイゼリア」と入力してみた。トップに来るのが、「サイゼリヤ」のホームページである。ごくふつうに誤認されているのだとわかった。でも、気になるなあ!
同じような事例に、気象情報サービス会社の「ウエザーニューズ」のケースがある。創業者の石橋さんは、亡くなるまで「ニューズ」(濁音)にこだわっていた。しかし、最後のころは、社名とサービス名を「ウエザーニュース」に変更した。英語の読み方(正しい発音)では、「ニューズ」が正しいのだが、日常的には、日本人は「ニュース」と発音する。
一般的な表現にしたほうが、自然である。若者の表現方法(例えば、全然すごくない?!など)が、一般化していくのと同じ理屈である。石橋さんも、だから、ウエザーニュース社に代えたのだろう。常識的な判断である。
わたしにも、そうした「こだわり言葉」がひとつだけある。ブランドの「ロイヤリティ」である。マーケティングの研究者のなかでは、「ロイヤルティ」がメジャーである。
手数料収入などの意味の「ロイヤルティ収入」と紛らわしい。わたし自身は、17年前に日経文庫を出すときに、「ブランド・ロイヤリティ」として以来の慣行である。
しかしながら、あれから20年。いまや、ロイヤルティが主流である。長い物には巻かれるタイミングであろうか? ブランド本でも、「ロイヤルティ」という表現が8割を占めるようになった。そろそろ、お天気の「ニューズ」のように、ロイヤリティの旗を降ろす時期かもしれない。
さて、本日は、客員教授の藤田尚弓さんと、「SOHO静岡」の講演会である。
藤田さんは、元水戸警察署の婦警さん、銀座のナンバーワンホステスさんからIT起業家へ転身。テーマは、仕事の「交渉術」である。
わたしも学びたいテーマだが、講演の場所は、静岡である。ごめんなさい。いつか法政大学でまた、お話をお願いします。