中棚荘滞在日記(9): 本日、開店休業

 中棚荘の別邸、はりこし亭は、水曜日が休みになる。主任の丸山さん(旧姓、福尾!さん)も、本日は休養日である。どなたが、わたしの夕食のお世話をしてくれるのだろうか。不安のままに、夕方を迎えた。



 わたしは、どこにでも寝られる性格だ。
 遠田先生(元同僚、今年H大学を退職)と米国横断旅行をした。1981年の秋のことである。サンフランシスコからネブラスカ州のリンカーンを経由して、ロサンゼルスまで10日間の自動車旅行だった。そのときには、いろんなモーテルに泊まり歩いた。
 あのときは、スピード違反で警察のご厄介になりそうになったり、ラスベガスでは、部屋を借りるのに、けっこう危ない目にも遭った。値段の交渉で、マフィアに首を絞められそうになった。

 学生時代には、秋田への帰省の切符が取れずに、12月31日の臨時列車の立ち席で帰ったことがある。トイレの前があいていたので、そこで一晩、新聞紙を敷いて寝た。別にどうということはなかった。鈍感力はひと一倍あるらし。
 ところが、今回は、広めの部屋「藤村」に移って、枕が替わると(笑)、昨夜は寝付きが悪かった。二間つづきは、一人では淋しいからかもしれない。しろがねが、なつかしい!

 仕事の話である。今日は一日、サービス関係の文献を眺めていた。次回作の準備を兼ねての合宿である。事例はほぼ集め終わっているので、枠組みを準備している。
 SDL(サービス・ドミナント・ロジック)など、細かく読んでいた。10個集めた事例を、きれいに捌く包丁を研ぐためである。まだ、この仕事に関しては、臨界点を超えていない。
 神様が、「書きなさい!もう、書けますよ!」と言ってくれるまで、タイミングを待っている。英語では、”It’s coming!”というらしい。不正確な知識だが。Comingには、ちょっと卑猥な意味もある。だからではないが、好きな表現である。

 「藤村」の間は、部屋の名前が、作家の「島崎藤村」にちなんでいる。なんだか、まじめに仕事をするにはよい部屋だ。ここにいると、活字がなじんできて、外に走りに出る気がしなくなる。

 夕方、それでも、しごとにひと区切りがついたので、千曲川沿いに下流の方向に走ってみた。
 小諸駅前の懐古園まで、川をぐるり。距離は短いが、千曲川には河川敷というものがない。川の流れは速くて、両岸は、急峻な崖になっている。
 本日の走路の高低差は100M。二回のアップダウン。合計で7KM。8月は、トータルで186KMになった。残念ながら、目標の200Kには及ばず。

 夏休みが終って、宿にはファミリーがいなくなった。お年寄りの二人連れが主体だ。年寄りは話す早さもゆっくりだから、宿全体が静かになった。わたしも、年寄りだったことを忘れていた。丸山さんがいないので、他の方の迷惑にはならないだろう。

 本日は、丸山さんだけでなく、女性の従業員さんがひとりもいない。
 男性スタッフが、「今日は、男性ふたりだけで、、色気がなくて、、」。すまなそうに、お造りをもってきた。
 一緒に、「ひしの南蛮」を持ってきた。とてもからい南蛮だそうだ。「ひしの」(菱野)は、地名である。高峰高原まで走りに行くときに通る、斜面にある部落である。温泉がある場所だ。
 ピーマンの形をしているが、たしかに本当に、気持ち良いくらいに、か、ら、い。