信州小諸・中棚荘、滞在日記(3): 日大駅伝部のランナーと山道ですれちがう

 朝から大雨になった。滞在、3日目。千曲川沿いのショートコースを、今朝は走れない。雨の音を聴きながら、布団の中で7時すぎまでごろごろしていた。このまったり感覚がすてきだ。ぜいたくな時間。



 目の前は、樹齢100年を越える銀杏の大木。雨の雫が、枝先の葉っぱから二階の屋根に落ちてくる。ぽとん、ぽと、ぽとん。静かな雨音を立てている。

 昨日からの習慣で、朝風呂と食事が終わってから、PCを小脇に抱えて、ロビーに上がっていく。わたしが泊まっている大正館は、母屋(本館、平成館)からは少し降りたところにある別棟だ。
 コーヒーを飲みながら、ネットに接続する。約1時間の軽作業。何通かのメールに返信する。コーヒーのソーサーに、庭から摘んできた野の花が添えられている。
 小菊にクジャク草かな。粋な計らいだ。楚々としているから、押し付けがましくない。

 雨が上がるのをじっと待つ。研究室からは、20冊ほど、ビジネス書の最新作と古典の両方を、宿には持参した。
 午前中は、クルステンセンが10年前に書いた『イノベーションのジレンマ』を読む。いまでも売れているベストセラーだ。前半部分に、たくさんのラインマーカーが引いてあった。

 二度目に読むと、最初はどこに目が行っていたのかがわかる。発売当時、後半は飛ばして、そのままに書棚に戻しておいた本だ。たぶん、最初の2つの章のディスクドライブの事例で、退屈したものとみえる。
 いま読み返すと、別の本のように感じる。わたしが進化したからだろう。実務も経験した。たくさんの生の事例も見てきた。クリステンセンの仮説は、いまでも生きている。それどころか、多くの企業は、いまだ成功のジレンマに悩まされ続けている。

 この本が出ても、つまりは、理屈がわかったからといって、世の中が変わったわけではない。イノベーションは起こっていないに等しい。わかっていながら、手の下しようがない。なんとも皮肉な話しではある。
 こんな話しをいま、客員教授の平石さんは、イノマネ大学院で講義しているのだろうか。市ヶ谷で、夏の集中授業のはずだ。

 連日、お昼ご飯を抜いている。一見、からだに悪そうだが、朝夕のご飯が充実しすぎているからだ。これだけ豪華な食事をしていたら、お昼ご飯はいらないだろう。

 朝と夜の食事メニューを紹介してみる。一泊の料金はそんなに高くない。blogの読者にもオススメの宿だ。メニューを聞いただけでも、来てみたくなるかも。

 まず、昨日のメニュー。朝の食事から。
 スターターは、ジュースから入る。林檎ジュースか、ヤギの乳のどちらかから選ぶ。わたしは、いつも、りんごのジュース!はじめに、山菜の佃煮、5種類。とろろ汁(のりとごまの小皿を添えて)。
 カレイの西京漬け、温泉卵、焼海苔、なめこと揚げのみそ汁、玄米ご飯(炊き上げたばかりで、湯気が出ている!)、フルーツトマト。
 らっきょとたくわのお新香。もう、お腹がいっぱいになる。二杯も、お替わりをした。

 つぎは、昨晩のメニュー。
 おさしみ3点盛り、馬刺し(ニンニクを氷に添えて)、牛肉のオイル焼き、鯛の炊き込みご飯(火を入れてから15分待つ)、山芋の梅じそ和え、海老とアスパラと山菜などの天ぷら、煮物(茄子と海老しんじょ)、鮎の笹焼き、デザートは、フルーツ(ぶどうと桃)。
 忘れてました、お新香もありました!

 記憶力は、一般的には、わたしはあまりよくない。しかし、食べ物と女の子との会話は例外だ。お腹が空いてきたぞ(笑)。blogを書いているいま、まだ6時前なのに。

 話しを、雨上がりの午後に戻すことにする。
 午後2時半に、雨がほぼ上がった。高峰高原の山道に向かう。今日は、サイクリングロードを往復12KM走るつもりで、旅館を出た。
 初日と同じ場所に、車を停めた。道路脇の芝生の横手。車のキーは、NIKEのランパンに入らない。昨日とは種類がちがう。スヌーピーのホルダーをつけたまま、鍵を手にもって走りはじめる。
 フラットな舗装道路だから、昨日よりは走りやすい。砂利道を走ることは、バランスのとりかたをからだに学ばせるには、かなり有効のようだ。3日目で、山道を走り慣れてきたような気がする。

 3キロほど走ったところで、山から雨が降りてきた。地上では晴れていても、山の中の天気はまた別だ。先の道も、ぬかるみはじめた。
 思い切って引き返すことにした。ずぶ濡れになったら、風邪を引くかも。往復で7KMにしかならない。足りない距離は、折り返しの先まで、温泉まで突き抜けて走るか。

 復路も終わりかけたところで、学生の一団がやってきた。ランニングシャツに、日大駅伝部とある。いまや、法政は日大に敵わなくなったな。ん、残念。
 最後のほうから、ひとり黒人のランナーがふらふらと、後ろから一団についてきた。わたしのほうを、ちらと見た。目があった!
 正月にテレビで見た顔だ。名前は忘れたが、二区を走っていたアフリカからの留学生だ。1月に、エチオピアとケニアを旅したとき、彼のようなランナーが、大挙して高原を走っていた。
 標高2500~3000M。女性のランナーもいたな。留学できるのは、彼ら彼女らのうち、何人だろうか。受け入れ先は、日本以外にも、あるのだろうか?などなど、バスの中から、彼らの走りを眺めていた。

 ベンジャミン?ではないか(秘書の福尾からコメントあり)。あまりやる気がないなあ。そう思ったのは大いなる誤解だった。
 ウォーミングアップが終わると、猛烈なスピードで、全員にギアが入った。高峰高原に向かう、急な上り坂を、20人ほどでぐんぐん昇っていく。
 サイクリングロードと交差する場所からは、くねくねした山道が、高峰高原まで10キロほどつづいている。曲がりくねった傾斜のきつい山道を、箱根の上りに見立てての練習なのだろう。

 雨が本降りになってきた。昨日よりは早い時間だが、もう上がることにしよう。お腹も空いてきた。そろそろ洗濯もしないと。汚れ物が貯まってきている。

 明日は、晴れてくれるかな。つぎは、2時間走のタイミングだ。合宿中に、最低3回。20Kを走らねば。