利他的行為への時間投資(3%ルール): 災害ボランティアのパーソナリティと行動傾向

 頼勝一君の研究アドバイザーをしている。彼の研究テーマは、もともとは商品開発だったのだが、博士課程の3年目からは、「利他的行為のベネフィット構造」に研究がシフトしてきている。オーガニック食品や省エネ家電、ボランティア活動やギフト行為が研究対象である。

 昨日は、別件(日野自動車のコンサル)で大阪から上京していたのだが、ドクター論文の研究進捗状況を報告にも来ていた。ネット調査の設計に行く前の相談である。
 ふたりの議論は思わぬ方向に行った。ボランティア行為のベネフィットに関する論文の内容を議論していた時である。その場で取り上げていたのは、ボランティに参加するための動機に関する研究だった。
 あるひとの研究論文の引用である。ボランティア行為の動機としては、利他、経験蓄積、参加の満足、防衛など、その他10項目があがっていた。

 その席で、頼くんにわたしの経験を話した。復興支援の活動事例である。
 周囲の少なくない人間が、東北地方で被災地の復興ボランティア活動に参加している。いまでも参加は続いている。これは、基本的には利他的な行為であるのだが、人によって、参加のタイミング(4月、5月、6月、7月)と密度(滞在期間、日帰り~一週間以上)と異なっている。
 たとえば、学習大学の上田隆穂教授からは、昨日、被災地での活動の写真を送ってもらった。参加は夏休みに入ってからの7月以降、学生たちと一緒の行動で、滞在期間はわからない。大学から支援を受けているかもしれない。個人参加かもしれない。
 東京ガスの中塚千恵さんも、東北地方の支援活動に参加している。会社ぐるみの取り組みで、バスで仙台まで言って一泊で帰ってくる。個人的な支援動機もあるだろうが、会社の活動の一環として参加している。いままで数回、支援のバスに乗っている。
 静岡県庁、徳島県庁でも同じ話を聞いた。県レベルで支援をしているのである。法政大学も同様な活動を行っている。

 個人参加では、わがゼミ長の吉識(よしき)くんが、震災後すぐの4月に被災地に向かった。数日間の滞在だが、就活が終わったので(某ビール会社に内定)、また参加したいと言っていた。
 3年生の田中さんは、法政大学の被災地支援プログラムでの参加である。たしか4月から5月の連休にかけてだった。期間は一週間程度である。
 青山フラワーマーケットの井上英明社長も、震災後すぐに支援に行った。最初は、それでも個人での花配りの支援だった。その後は、「花の応援隊」という、会社を中心として、NPO的な組織を立ちあげている。
 わたしはといえば、被災地を支援するのは、経済行為が一番だと考えた。売れなくなって価格が下落したチューリップの購入支援と、東北地元の温泉に宿泊して、お金を落とすことが一番の復興支援につながると考えた。
 考え方の違いである。直接ボランティアで参加しても、力のないおじいちゃんなのだから、足手まといであろう。支援のスタイルはいろいろである。

 被災地のボランティア活動ひとつをとっても、利他的な行為の動機と行動のスタイルが異なっている。実際的な参加活動は多様であるが、その行為と動機を支配していることには、ある種の法則があるように思う。
 たとえば、被災地のボランティア活動に、自分の時間をどの程度投入することができるのか? 3カ月半(100日)のうちの3日間を投入するならば、全体の時間投資は3%である。一週間行けば、それが7%になる。
 周囲の復興ボランティアを見ていると、だいたい「3%程度の貢献」と推測できる。頼君には、「最低が1%、最高が10%程度。平均が3%」とわたしは予見している。確かめてみると、よいだろう。
 また、ボランティアとはいえ、経済的な資金投入も必要である。交通費、宿泊費、食費など。企業や自治体、NPOが金銭を負担支援する場合もあるだろう。実際には、それがかなりの割合に上っている。

 というわけで、復興ボランティ活動の動機と実態を調べることで、自他的行為のベネフィットとコストを調査することは、今日的に、それなりにおもしろい研究テーマになるのではないのか?周囲にサンプルはたくさんいるが、もっと大々的に調べる価値はありそうだ。