創業者が年齢を経るにしたがって、事業承継がしだいに困難になってくる。若いうちにビジネスを子供や部下たちに渡した場合は、会社の生存率が高くなることがわかっている。ジブリ創業者のふたり(宮崎駿氏と鈴木敏夫氏)の決断も、やはり大きな企業の傘下に入ることだった。
約1年前の2022年8月に、4年間社外取締役を務めた「アールビーズ」が、アシックスに事業を売却した。このM&Aには、日テレも参画して、33%の株式を所有している。買収後は、アシックスが株式の67%保有している。
一方、ジブリの場合は、宮崎駿氏が82歳、鈴木敏夫氏が75歳。宮崎氏に息子はいるが、本人が社長就任に難色を示していたらしい。アールビーズのほうは、ランニングサイトのエントリーとマラソン大会の運営計測の会社だった。IPOを目指していたが、創業者の橋本治郎社長と下条由紀子副社長の夫妻にお子さんがいらしゃらないことと、75歳という年齢が株式上場の壁になっていた。
最終的には、ジブリと同じ日テレとアシックス連合軍に事業を売却することになった。とはいえ、コロナ明けで全国各地でマラソン大会が復活している。その後の事業運営は順調そうに見える。良い売却先が見つかったともいえる。
さて、スタジオジブリの場合は、どうなのだろうか?大手の傘下に入るしか、選択肢はなさそうに見えた。スタジオジブリの組織内に優秀なクリエイターはいるのだろうが、事業を運営する能力はまた別物である。『君たちはどう生きるか』を制作している間に、創業者2人が直面していた課題は、「君たちは事業をどう整理するか」だった。
日本アニメのためにも、残されたクリエイターたちのためにも、ジブリの未来に幸あれ!