済州島輸出振興本部、事務官の梁(ヤン)さんとお会いした。ご本人は、水産物の輸出支援担当である。中島君からの紹介だった。梁さんが東京ビッグサイトで開かれている「水産展」で来日していたので、展示会の合間を縫ってホテルサンルートでお会いした。昨日のことである。
済州島を走っていて、百合の温室が多いことに気が付いた。どなたか、関係者を紹介してもらえないかと、中島くんにお願いしていた。たまたま来日していた梁さんに、済州島の農産品のデータがほしいとお願いしてあった。
ヤンさんは誠実な方で、わたしが事前にお願いしていた資料を完璧に準備してくださった。済州島の切り花農家数(約100軒)、栽培面積(約100ヘクタール)、生産輸出額(日本円で、約8億円)。そのほとんどが、予想の通り百合であった。球根はオランダ産で、輸出先はほぼ全量が日本である。
3月の震災で、輸出先を失って苦戦しているらしい。国策で栽培しているので、輸出補助金が支給される。奨励金の中身は、輸出物流に対する補助金であった。
IFEX(国際花き展示会)に出店した共通の友人がいて、レストランから、梁さんが携帯で韓国に連絡をしてくれた。名前を忘れてしまったが、幕張メッセの韓国ブースで約30分ほど、韓国の百合生産輸出事情について話していた(メモがどこかにあるはずである。いずれ紹介してみたい)。
さて、梁さんは、花の専門家ではない。2004年には日本駐在して、海洋大学(元の水産大学)で客員研究員をしていた。水産物の専門家である。そこで面白い話を伺った。
済州島の最大の輸出品は、ひらめである。年間で、約40億円を日本に輸出している。日本人が食しているひらめの80%は、韓国済州島産であった。したがって、わたしたちが回転ずしで食べるヒラメのエンガワは、ほとんどが済州島から来ていると思って間違いない。
「もともとは日本の技術なんですよ」とヤンさん。鹿児島や大分で養殖していた水槽を、韓国に持ち込んだのがはじまりである。1986年ごろから、技術移転は始まったという。
国産のひらめは、それに対して年間8億円である。半分が天然もので、半分が養殖ものである。ちょうど、済州島からの百合の輸入額と同じである。
実は、話していて一つの疑問が氷解した。済州島マラソンを走っていて、海岸線に正体不明の温室みたいな建造物があった。黒い布(テント)のようなもので覆われている、かまぼこ型の「温室」である。透明ではないので、中に何が入っているだろうかと思っていた。そのすべてが、実は、ヒラメの養殖のための水槽だったのである。
「能登半島のあたりで、廃校になった小学校を使って、ひらめの養殖をしている友人がいますよ」。 同席してくださった守重副会長(インパック社長)からの情報である。
日本では、廃校になった小学校(教室の大きさ=水槽のサイズ)で、ヒラメが養殖されているのである。済州島では海水を水槽に引き込んでいたが、日本では、海水のような成分を機械で作り出して(海水を作る技術=アクアテック)、内陸で養殖をしているようだ。
守重さんから見せてもらった名刺には、「アクアテックジャパン」(旧社名、フィッシュインテリア)とあった。もともとは、割烹や料亭にある「いけす」を作っていた業者さんである。それが能登半島の山の中で、魚の養殖をはじめたのである。
同じ水の会社でも、いけすの販売網と、そのために必要な海水を作る技術を持った企業である。起業家たちは、さまざまなことを考えるものだ。