昨日、学位(MBA)を取得した学生の中に、モンゴル人の女性がいた。カミラさん(漢字では、「上」と「下」の二字を上下に重ねた一文字)である。武道館での卒業式がなくなり、大学院で卒業証書を手渡す儀式なのだが、ひとりひとり手渡したあとで、卒業生からあいさつをしてもらった。
7期生(6期生)の65名の中から、わたしが指名したのは3人だった。最優秀プロジェクト賞を獲得した、近藤君(静岡SC第一期生)、総代の藤井君(成績最優秀者)、そして、カミラさんである。
司会を務めたわたしが、校長先生として、カミラさんにあいさつを頼んだのに、三つの理由があった。カミラさんは、大学院創設以来はじめてのモンゴル人留学生だったこと。二番目は、女性であること(残りのふたりは男性)。
三番目は、大震災の中、3月18日から数日間、カミラさんは、自らがクルマを運転して、東北の被災地まで支援に出かけてくれたことである。その体験と想いを、卒業生や先生たちに伝えてほしかったからである。
3月18日に、カミラさんから大学院の学生と教員にメールが来た。
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皆様
イノマネ一年制カミラでございます。 この度の地震により万人を失った喪失感は計り知れないものです。しかし、今を経験した日本は誰一人の命も無駄にならない復興を世界へやって見せることでしょう。そして、この戦いに勝てるのは日本しかないと信じております。
私を本日まで見守り、育てたこの愛しき国になにかできることないかと思い、昨晩「内モンゴル光の会」を設立しました。今のところ、わずか9人の組織ですが、ボランティアでどこまでも行き、なんでも致す決意でございます。
なにかボランティア必要な場所ございましたら、24時間随時連絡ください。24時間随時出発可能です。情報ください!!
連絡先: ××××
以上 kamira
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カミラさんの仲間は、看護士経験者2名にクルマ一台。総勢7名が全員が、モンゴル人かどうかはわからなかった。でも、翌日(3月19日)の午後5時には、すでにクルマで山形に向かっているという連絡がカミラさんから入ってきた。
クルマが小さいらしく、「わたし(カミラさん)と運転手さんの2人で出発しました」とあった。歯ブラシセット、カイロ、衛生用品、浅草お守り(子供たちに配るために、浅草寺で購入したと「あいさつ」で話してくれた)、枕、飴、マルチビタミン、靴下など約670点を被災地に支援物資として持ち込んでくれた。
震災後の原発の放射能漏れを恐れて、外国人はいち早く国外に脱出した。そのニュースを聞いていた矢先に、カミラさんの勇敢な行動を知った。日本人でも、安全な場所に脱出するものが出るくらいの危機的な状況だった。
カミラさんは、成績優秀な学生であるだけでない。恩義を決して忘れない、使命感にあふれた留学生である。そうした留学生を卒業生として持つことができたことを、校長として大いに誇りに思いたい。
いつかブログに書いた「トルコと日本の絆:難破船の救助」のことを思い出していた。