このところ、団塊世代業界人の現役からの退職が相次いでいる。本日は、八木滋さんの退職祝いを銀座で行うことになっている。明治大学の水野誠さんがセットアップしてくださった祝いの席にわたしも御呼ばれした。NY大学の高田先生、学習院大学の上田さんも参加の予定である。
なんといっても、八木さんとの思い出は、1980年代に取り組んだ「ホームスキャン」のシステムである。当時、米国でIRI社という調査会社があって(いまどうなっているのだろう?)、バーコードをスキャンすることで、消費者の買い物行動のデータを大手メーカーに提供していた。
テストマーケティングも兼ねてもいたので、テレビ広告の視聴率を調査していたビデオリサーチにとっては、視聴率と組み合わせた新しいサービス(シングルソース)になるはずだった。八木さんは、この事業に消極的であった。にもかかわらず、上司から呼ばれて、ホームスキャンの事業を担当することになった。
何年間サービスは続いたのだろうか? 6~7年くらいだったろうか。研究者仲間としては、ずいぶん学会発表のネタの提供にご協力していただいた。わたしの最初の頃の書籍『POSとマーケティング戦略』(有斐閣)の材料になった。残念ながら、ホームスキャンは、現在は存在していない。
サービス提供事業として続かなかったのは、事業性そのものが原因というよりも、制度的なしばり(CMのスプリットランができなかったことなど)にあったように思う。運不運があるすれば、誠実に取り組んでいた分、八木さんの努力は、結局は報われなかったのではないかと思っている。
海外の学会出張の飛行機の中で、八木さんは、隣の席で英語のペーパーバックを黙々と読んでいた。ホームスキャン事業が終了したあとのことで、どこかその目は寂しげだった。
八木さんは、このサービスを構築する途中で、体を壊された。息子と一緒に、病院見舞いをしたことを覚えている。どこかの療養所だった。そういえば、八木さんは、これとはちがって、もう一度、ある病気の手術で病院に入院したこともあった。秋葉原の三井総合病院だったかな?
山登りを趣味としていた八木さんだから、退職したらゆっくり海外の山でも歩くのだろうか?わたしも、自由になったら、きっと海外のマラソン大会に参加するのだろうから。35年間?ご苦労様でした。