しまむら野中社長の最終インタビュー: 『小川町物語(仮)』の取材、すべて完了

昨日は、最後のしまむら「宮原詣で」になった。午後4時からはじまった野中正人社長へのインタビューは、応接室が真っ暗になる夜の7時まで続いた。3時間、休憩なしで。さすがに脱力感でぐったりした。


2007年から始めて、実に長い取材期間だったな。と。小学館の編集担当者、園田さんと、そのあと、宮原駅前の居酒屋で飲んで帰った。だいぶ、酔っ払った。川越の地ビールに、奈良産の日本酒を3合。京浜東北線から武蔵野線に乗り換えるとき、電車を間違えそうになった。気がついたら吉川だった。

 野中社長へのインタビューの内容は、公開できない新しい情報も含んでいる。残念ながら、このブログではすべてを紹介できない。
 ひとつだけ明確なのは、藤原相談役(元社長)も、一般社員(例えば、M社員出身の蓮田店の土屋店長)も、しまむらの理念を語るのに、まったく食い違いが見られないことである。そうした日本企業は、けっこうめずらしいのではないだろうか。野中社長に話していただいたのは、一言で言えば、「しまむらのビジネスは、シンプルでわかりやすい」だった。
 島村恒俊オーナーが50年前に最初に作りはじめて、それを藤原相談役が20年をかけて完成させた。このモデルは、「ふつうの人ならば、だれでもが簡単に理解できて実行ができる仕事の仕組み」である。
 そのことを、野中社長も、昨日は淡々と語ってくれた。愚直に、「予測、検証、改善」の作業を繰り返して、いまのかたちに行き着いたものである。完成度はかなり高いのだが、環境の変化にあわせて、つねに改良と新化をしつづけている。
 都心型の新立地、PB商品への取り組み、CMコミュニケーション、ファッション商品の開発など。地道ながら、オペレーションの改善も日々続けている。目立たないが、すばらしい会社である。
 
 こぼれ話をひとつだけ。宮原の本社を訪問する前に、時間ができたので、都心実験店舗の「ファッションセンターしまむら、高田馬場店」を事前にリサーチしてみた。午後14時30分から15分間。
 衣料品の売場は、高田馬場にある「大丸ピーコック」(食品スーパー)の2階にある。売り場面積は、通常の標準店(350坪タイプ)の半分強。おそらくは、歩幅で測ったから、推定200坪(650平米)。寝具の売場がない。紳士服や婦人のフォーマルなどの商品が大幅にカットされている。
 「2007年の開店から、2ヶ月ごとに売場を変えてきた結果」(野中社長)とのこと。店内の陳列は、通常店舗より什器の位置が高い。買い物がしやすいように、通路幅が広く取られている。その分だけ、店内の見通しがやや悪い。
 店内には、もっとも店がすいていそうな時間帯にもかかわらず、約50人の顧客。老若男女、年齢も国籍もさまざまである。レジは3台(5台設置)が開いていた。観察していた10分間で、10人が買い物をして帰った。何も買わずに、階段を下りていった人が8人。買上率は、60%前後か?
 朝10時開店、夜20時閉店だから、営業時間は10時間。一日のレジ客数は、推定で1000~1200人。買上点数は、見た目では5~6点。客単価は、1500~1800円だろう。推定日販は、180~200万円。年商6~7億円くらい。通常(日販100万円、年商3億円)の倍の売上である。
 賃料は、わりに安そうだ。売場は、食品SMの2階である。通常ならば、都心のあの立地で、月坪当たり2~3万円程度だが、借り手がなかなかつかなかったような場所である。たぶんもっと安いだろう。半分とすると、200坪の賃料は300万円前後。
 推定の月間売上は、5000~6000万円である。売上に対する家賃の比率は、しまむらの標準値5%よりやや高いくらい(全て込みで6~7%)である。都心立地200坪モデルで、採算は充分にとれている。

 上記のような、15分間の観察結果(日販と年初の推測値)を野中社長に示したら、「かなりそれに近いですね。もっとも、最近になって(実験と改善の結果で)そうなったのですが、、、」。そのあとで、都市型店舗が、好調なわけを説明していただいた。これ以上の情報は、NGなので、止める。

 3年間にわたる「しまむらとヤオコー」の取材は、すべて終わった。 あとは、9月1日の発刊にあわせて、「チェーンストアエイジ連載」の原稿を、再編集する作業をはじめるだけとなった。全5章編成のシナリオは、園田さんと打合せ済みである。
 発行価格(1200円を予定)や全体のボリューム(192ページ)、書籍のコンセプト(一般にもわかるビジネス本)やおおよその体裁(ソフトカバー)も決まっている。小学館向けの企画書も、編集会議ですでに決済がおりている。
 9月1日発売に決めたのは、ヤオコー(八百幸商店)の「創業120年の記念セレモニー」に出版日をあわせたからである。夏場に出版しても、本があまり売れないし。
 あとは、わたしの気持ち次第である。「よし、これでもういけるぞ!」というタイミングが来るのを、作品が熟成する瞬間をじっと待っている。