5年ごとに、花き産業の振興方針を定める農水省の会議に、JFMAの代表者として参加している。産業の代表者から選ばれた委員の数は約20名。夏にはじまった会議は、先日、第6回目の最終取りまとめが終わった。
農水省の最高幹部(大臣と局長クラス)の了承が得られれば、この最終案がこの先5年間の「花き関係予算」に具体的に反映されていくことになる。委員会のメンバーとして参画するのは、これが3度目である。今回の基本方針(案)は、前2回とはその性格が大きく異なっている。
第一に、表尚志室長(花き産業振興室)のイニシアティブもあって、花き産業の振興方針を策定する会議が、実質的な審議を行う場になったことである。わたしが経験した前2回の会議は、運営の形式を重んじるばかり、踏み込んだ議論に至ることがなかった。農学系の先生たちがどのように感じたかはわからないが、すくなくとも商学系の代表者としての出席した印象は、しごく物足りないものであった。
第二に、実質的な議論に踏み込んだ結果として、日本の花き産業は、ふたつの大きな成果を会議から得ることができた。花の産業に従事するものにとって、新しい基本方針がもたらした果実は魅力的である。わたしたちの産業にとっては、実質をともなう大きな転換点になるはずである。
その成果のひとつは、「食料・農業・農村基本計画」の中に、日本農業の重点政策分野として、「花」(非可食作物)が含まれるようになったことである。従来は、食べられる農作物でないことから、花き類が重点予算に組み込まれることはなかった。表現はよろしくないが、花は農業分野では「継子扱い」されてきたという歴史があった。オランダ花王国のことを。ずいぶんとうらやましく思ったものである。
農水省が花き産業について基本政策を転換したのは、生産性と収益性のふたつの観点からである。よく調べてみると、稲作や野菜などの栽培と比較して、花の分野は専業農家の比率か高く、粗収入も高いことがわかってきた。全農業人口に占める花農家の割合は、わずか4.8%にすぎない。それに対して、新規就農者の約20%が花き類を栽培することを希望している(2008年度)。つまり、花の栽培は、収益期待が高いことが明らかになったからである。
農水省は、従来は、農作物の「国内自給率」を高めることを唯一の政策数値目標としてきた。今後は、「農家収入の増加」をもうひとつの政策指標とすることになる。農家にとって高い収益が確保できて、「儲かる分野」を推奨する必要性がある。そのターゲット分野が、花生産であった。
二番目に、花関連予算が増額されたことである。昨年度までは、ハード(温室や集出荷設備への補助金や融資分)を除くと、ソフトの予算(例えば、輸出補助金や海外展示会)は年間2千万円程度であった。この予算規模が、来年度からは、2.5倍(約五千万円)に膨らむことになる。内容は、わたしどもJFMAが推奨してきた分野である。例えば、①日持ち保証販売の実証実験、②花育の推進事業、③花の情報発信、④その他(従来のもの)である。
産業に対する政府のお墨付きと実質的な振興資金の注入。花の産業は、大きな飛躍のためのジャンプ台を得ることができた。来年度からの取り組みが楽しみである。