引用の作法: Copy&Pasteはほどほどに

年度末なので、論文の指導や審査をすることが多い。昨日も、日本ショッピングセンター協会の卒業論文の審査で、SC協会勝どき事務所で審査の会合をもった。予備選考会で、10数編の論文から優秀論文の候補を選考する会議である。その場で少し困ったことになった。


ある生徒が書いた卒業論文のうち、約10頁分が、企業HPとビジネス誌からの丸写しだったことが判明したからである。ひとりの審査委員の先生が、その論文と雑誌および企業ホームページをつき合わせて、「複写率」(まるごと同じ文章)をチェックしてくれた。
 ある特定の章(約10頁分)を照合したところ、約60%が「完全なるCopy&Paste」であった。HPの文章を、正確に複製したことになる。それ以外の章は、独自の調査に基づく執筆だったので、とても残念である。その学生には、悪意があったとは思えない。単に作法を知らなかっただけである。
 本筋とは関係がない枝葉末節の引用部分で、公開資料を丸ごとコピーしたために、本論のすばらしい成果を正等に評価してもらえなかったのである。複写率を計算してくださったその先生も、本論の実質的な成果については、高く評価してくれていたから、なおさら惜しいことであった。

 教訓である。引用の蔡に、安直なカット&ペーストは、やめましょう!
 以前は、学者の世界で論文盗用が問題になっていたが、簡単にネットから文章複写ができるようになったいま、素人論文でも知的所有権の盗用は大問題になる。今度のように、卒業や表彰がかかっている場合は、なおさら細心の注意が払わなければならない。
 いまは、HPをサーフィンして、悪意でCopy&Pasteするひとが増えている。その対策として、文章複写をチェックするソフトが開発されているそうだ。悪気が無くとも、人が書いた文章、しかも公に公表されているものを複写するときには、最低限、自分の言葉で書き直すべきである。たとえ注釈できちんと資料を引用している場合でも例外ではない。

 そこまで考えてこの文章を書いてみたのだが、また、ぞっとした。というのは、引用した文章を、あたかも自分の文章であるかのように、論説の「エッセンスをブレンドするソフト」が開発されているかもしれない。そう思ったからである。
 適当な文章作成ソフトを開発すれば、簡単に盗用ができることになる。いたちごっこになるかな、と。そんな時間があったら、自分の頭でものごとを考えなさい、といいたくなる。
 しかし、わたしのHPなどは、Copy&Paste材料の宝庫みたいなものである。惜しげもなく、知的所有権を公開しているのだから。丸ごと引用して真似されるのが、一流の証かな。