花の販売が年末、スーパーで増えたのは、「巣ごもり消費」の恩恵だったか?

 週刊ダイヤモンドの特集(2010年1月)が、「やっぱり売れたのは巣ごもり関連商品!“イエナカ”派が支えた2010年初売り」だった。「ダイヤモンドオンライン」で記事の存在を知った。年末に花の消費実態を調べていて、全国のバイヤーたちへの聞き取りを行っていた。そのときに調査から得られたデータが、「巣ごもり消費」と一致している。


「年末、量販店で花の販売(切り花と鉢花)が増えているらしい」とは、なんとなく聞いていた。すべてのチェーンの全ての店ではない。ディスカウントスタイルの店では売り場と、インショップで運営されている店舗についてである。まだら模様なので、一般論については、判断は慎重であるべきかもしれない。
 一般的な印象としてではなく、事実を調べてみたかった。そこで、JFMAの会員メンバーに一社ずつたずねてみた。知り合いの量販店チーフバイヤーさんのほとんど、食品スーパーやホームセンターに納品している卸・加工会社の担当舎の皆さんに、かたっぱしから電話をかけてみた。JFMAの会員でない会社についても、知り合いの情報ということで、なるべく広い範囲で店頭の状況をたずねてみた。
 クリスマスから大みそかまで、10日~二週間程度と期間はあいまいである。参考値とお考えいただきたい。
 具体的な会社名は明かせない。この匿名データベースには、全国・ローカル、どちらの量販店も含んでいる。業体もさまざまである。アルファベットのあとは、「対前年比」(既存店ベース、全店ベース)である。花(鉢物含む)の売上対前年比の数値である。

 スーパーマーケット(一部、GMS含む)
  A: 101(既存店)、105(全店)
 B: 105(既存店)、110(全店)
  C: 107(既存店)、113(全店)
  D: 101(全店)
  E: 102(一部店舗、既存店)  
  F: 120(全店)   
  G1: 95(一部店舗、既存店)*セルフ 
  G2: 105(一部店舗、既存店)*インショップ
  H: 100(一部店舗、既存店)
 
 その他(HC、ディスカウンターなど)
  W: 200(全店)
  X: 105(既存店)、110(全店)
  Y: 91(一部店舗、既存店)

 食品スーパーやホームセンターは、商品全般には、暮れの「巣ごもり消費」の恩恵を受けていたとは言えない(らしい:複数のバイヤーヒアリングから)。ディスカウンター(W社)は、総じて業績がよかった聞いている。ただし、どちらにしても、食品一般の不振に比べると、花のバイヤーさんから聞く話は、「花は比較的に良かった!」であった。「他部門の担当者からうらやましがられました」という関西のスーパーもそのなかにはある。
 おそらくは、量販店での花販売の好調(とりあえず、暮れに限定)には、3つのふたつの理由が考えれる。
(1)巣ごもり消費の恩恵
 自宅にいるひとたちが増えて、「切り花でも買って食卓に飾ってみようか」と考えた消費者が多かったのではないのか? 例年に比べて、単価はずいぶんと安くなったが、シクラメンの鉢が売れているように感じた。花束の売れ行きもよかった。価格を下げるのではなく、ラッピングに凝ったり、ボリューム感を出した店が業績はよかった。安売りだけの店は、客単価を落としただけだったようだ。
(2)スーパーで花を買う習慣の定着
 消費者の意識が、「花はスーパーで買うもの」に変わってきているのではないか? 不況の影響で、花店の仕入れは控えめになっている。需要はそれほど減っていないところに、暮れの花の相場は高めに推移した。予約相対で仕入れておいた量販店が、巣ごもり需要をすべて獲得したとの見解である。
(3)値段と鮮度の遡及が功を奏した?
 スーパーの花は、安かろう悪かろうだった。しかし、値段はずいぶんとこなれてきている。また、9月にヤオコーが「日持ち保証販売」をはじめてから、スーパーの切り花の鮮度イメージが変わった。オランダやさん(東京:専門店チェーン)などは、店頭POPに、「日持ち保証」を明示するようになってきた。各地で、鮮度保証販売(日持ち保証ではない!)がはじまっている。
 
 巣ごもり消費の底流には、いつかイケアの社長(スウェーデン人)が主張していたように、日本人のビジネスマンが「家に帰るようになった」(帰らざるを得ない!)ことがあるように思う。これで、自宅に友人・知人でも招くようにでもなれば、花は手土産としてその中心に居座ることができるかもしれない。わたしたちは、そのとき、もうすこし、お店で販売している花に、価値のある情報(物語)をのせてあげたいものだ。