ユニクロ上海のブレークはまじかか? 中国カジュアル衣料品店調査(2009) 打ち合わせ@上海

文部科学省の科研費の調査で、上海に来ている。大学院生の本間君と頼君と3人で、花園飯店に投宿している。院生にこのホテル(4つ星)は贅沢すぎるかも? 今回の短い旅は、実査を依頼する上海インテージの佐藤真大(まさる)さんとの打ち合わせを兼ねている。昨日は、上海の調査地点を実際に歩いてみた。氷点下零度で風がつめたい。路面店での調査には厳しい調査環境だ。


<カジュアル衣料品店調査>
 WEBと実購買者へのアンケート調査は、18日から実施される。春節の始まる前に、実施する必要がある。急ぎの打ち合わせになった。上海と南京での「カジュアル衣料品店」の購買実態調査を実施する。上海を選んだのは3年前のフォローアップをするためである。前回と同様に、ユニクロの協力を得ている。認知度、店舗イメージ、購買行動がどのように変わったのか? 
 南京を選んだのは、小川研究室のドクター学生、本間君の学会発表用だからである。中国人、とくに南京在住の中国人が抱く日本への敵対感情と原産国効果を調べるためである、カジュアル衣料品のブランド選択に、歴史的に形成されてきた「対日感情」がどのように影響するかを調べる。最近になって盛んな「アニモシティ」の研究である。認知率と購買率、選好度を調査するカジュアル衣料品の対象ブランドは、13個である。
 ユニクロ、ハニーズ、H&M、ザラの4ブランドについては、店舗で購入した消費者を捕まえてアンケートする。新たに、C&A(オランダのブランド)が加わった。ネット調査では、とくにブランドは指定しない。中国でのネット調査は、調査アイテム(商品以外の意見)などで制限が多いことがわかった。やってみないとわからいないことが多いので、現地調査ではいつも勉強させてもらうことになる。

 <バック・トランスレーション>
 海外での調査について、今回はひとつ大きな教訓を得た。やはり、中文と日文の逆翻訳(バック・トランスレーション)はきちんとやるべきだということである。これを欠かすとえらいことになる。
 日本語での調査票を、事前に上海から日本に送ってもらっていた。3年前の調査票でも、おなじ質問項目が半分ほどある。昨日、その共通部分を比較してみた。中文の翻訳が以前とはちがっている。もう時間がないので、今回は、日本語の部分を翻訳済みのアンケートに合わせることにした。程度を表す「やや」「どちらかといえば」「ひじょうに」などの副詞も、中国語と日本語がきちんと一致していない。
 上海インテージの事務所から、中国語がわかる頼君のお母さんにファックスしてもらった。重大な問題はなかったが、国際市場調査で教えている「逆翻訳」は絶対にスキップしてはいけないという教訓ではあった。

 <買上率の違い>
 4つのブランドのすべて入店しているのは、川向こうのショッピングセンター「正大広場」(プラザSC)である。4つのブランドのほかに、正大広場SCには、無印良品やC&A、エスプリ、ネクストなどが入っている。ユニクロの上海基幹店である正大広場店では、入店客と購買客の比率をカウントしてみた。1月10日午後12時5分からの15分間である。5年前は10~13人にひとり(@南京東路店)が、3年前には6~7人にひとり(@準海路店)が購入客だった。ユニクロの買い上げ率は、当時は日本に比べて非常に低い状態だった。
 昨日の調査結果である。入店者171人に対して、購買客数38人である。レジ袋の数で、買い上げ数をカウントした。ひとつの出口(22人)は、半分が従業員の出入口らしてい(頼君担当)。、買い上げ率は22%よりはもっと高いだろう。また、実際にはカップルや家族で来ているので、買い物袋を持っているのは、その約半分である。そのことを勘案すると、実際の買い上げ比率は、その倍の40~45%になる。
 帰りがてら、同じく4ブランドすべてが通りに並んでいる、准海路をふらふら歩いた。気になったので、各ショップから買い物袋を持って出て来た人の数を数えてみた。出てきたひと全員に対する買い物バッグを持っているひとの比率が、買い上げ率にある。
 15時から16時の間、ぞれぞれの店から100人まで、買い物袋を持って出た来た人の数を数えてみた。意外なことがわかった。
 H&M: 100人中13人(13%)、ユニクロ:110人中23人(22%)、ザラ:100人中4人(4%)、C&A:100人中5人(5「%)、ハニーズは路面店がないので、カウントができない。パークソン(百盛百貨店)内での観察(印象)では、ユニクロレベルか?

 <中国でもユニクロはブレーク直前?>
 ユニクロの場合は、正大SC内と路面店で、買い上げ率が20%と一致していた。過去のトレンドを考えると、「目的買い」が増えていることがわかる。バーゲンのシーズンであることを考えても、他社との比較でも猛烈に購買率が高い。ユニクロの作業効率の高さ(手早い)とサービス対応の良さ(感じが良い)が目立っていた。「多能工的」にサービス対応しているからである。レジ打ちとサッキング、店舗作業をひとりの従業員がこなしている。
 「僕が並んだC&Aでは、レジ打ち係と袋詰め係が分業している。お互いに助けあわないから、手待ち時間が長くなる。レジで客が込んでいるように見えるが、実際の業績はそれほど良くないのでは?」
(頼くん)」
 実際もそうだった。ザラとC&A(中国ブランド)とは、レジの作業効率とサービス対応が悪く、うまく客がさばけていない。客がたくさん入っていて長い列ができている割には、実顧客数はいまいちである。とくに、ザラは問題がありそうだ。
 ハニーズの特徴は、他のカジュアル店とは、完全にポジショニングが異なっていた。パークソンの売り場は百貨店内で、類似ブランドがそばにあるので目立たないが、正大広場SCのほうは、若い女子向きのニッチなブランドのイメージが強烈だった。
 上海人の購買力が上がってきていて、価格が高いユニクロの商品を購入する購買力を持てるようになってきている。
 「いつ行っても混んでいるので、土日はユニクロにはいかない」と佐藤さん。 「中国人を使っていて、なんであのモチベーションが維持できるのか?聞いてみたい」。
 佐藤さんの悩みを中国ユニクロに聞いてあげたいものだ。たぶん、経営理念の徹底+報酬制度だろう。日本でも同じことが起こっている。ユニクロは、グローバルに通用する組織になってきたのだろか?
 この調査結果は、2月3日にあがってくる。わたしが欧州ツアーから帰国するころである。本日は、頼くんのために、カルフールで内野のタオルを見学する。