今日風采(続き)

 「予告の続き」はいつも予定よりは2,3日遅れてしまう。さて、小学館”Oggi”の中国版「今日風采」(10月26日掲載)の続きである。


わたしが気になったのは、編集作業と出版のタイミングの時差である。例えば、日本ではすでに”Oggi”は12月号が販売されている(発行部数25万部)。10月中旬に刊行される日本語版(12月号)に登場する衣類や小物はすべて冬物である。これを上海で出版するとなると、1ヶ月半ほど遅れて12月1日号(11月下旬発行)になる。
 いくら寒い上海でも、冬物が処分になる直前ではないか? 日本語で編集している最中に、写真などの版下は電子ファイルで中国に転送できるらしい。それにしても、翻訳の速度もあるから、電子出版の良さを生かしても、何となく冬物のセールがはじまるときが中国版の出版時期と重なる。中国は言論統制が全くないわけではなく、微妙に写真や表現に規制がかかるので、素材を選別している間に、どうしてもズレが起こることは致し方がないらしい。
 もうひとつ、商売がらみで気になったのは、雑誌に掲載された商品が、上海や北京では入手できないのではないかという疑問であった。来週くらいに、「ブランド移転連載」の取材で、伊勢丹の海外事業担当者に面談できる手はずになっている。そのときにたずねてみようと思うが、いったい「今日風采」に出てくる新作のファッションを、上海の女性は実際に手に入れられるのだろうか? そのようなニーズはきっと存在するはずである。としたら、伊勢丹の担当者は”Oggi”を事前にチェックしているのだろうか?
 鈴木さんに伺ったところ、上海の伊勢丹と”Oggi”の営業部隊の間には連携がないとのことであった。目の前で鈴木さんが担当者と電話で話しているのを確認したので、これはまちがいがない。ちょっともったいない気がする。雑誌発売の1ヶ月前に、売れそうな商品が写真翻訳されている。また、取り上げ方やページの割付までわかっていのだから、人気ファッション雑誌と上海伊勢丹の商売が連動してもおかしくない。いやな言い方だが、新宿と上海の間には、うまいぐあいに1ヶ月の販売時差があるのである。これを利用しない手はない。
 現地の「現代美術出版社」には、発行から2年後のいまでは、日本人のスタッフは全くいなくなった。10人ほどいる編集スタッフのなかでも、日本語が堪能な中国人は多くはない。むしろ「移植ファッション雑誌」とはいえ、内容的に現地のコンテンツが半分を占めることもある。雑誌の編集にあたっては、写真とかファッションセンスが言葉の理解よりも大切だ、というのが鈴木さんの経験的理解である。それだけ、日本的な美的センスが普遍性を獲得しつつあるということでもある。