先週の4月23日(土)、北青山にSELEQLOがオープンした。ユニクロ商品の中から、3人の著名スタイリストたちがセレクトした商品を展示した一ヶ月期間限定のショップである。
一般公開前日の22日(金)、ファーストリテイリング社長室の真島英郎さんから連絡をいただき、地下鉄半蔵門線・表参道駅から歩いて3分のところにある17坪の店舗におじゃました。
SELEQLO!は地下鉄(B2出口)を出て左に折れた狭い路地から、外階段を昇った2階にある。いかにもユニクロらしい白銀(ホワイト・シルバー)系の色彩でまとめられた、至極こじんまりしたショップである。オリジナルTシャツ以外はすべて、既存のユニクロ店舗に並んでいる商品で構成されている。
22日の夕方は、撮影のためにカメラ・クルーが入っていた。17坪と言っても、勘定台(レジ)と試着室(2ボックス)のスペースを引き算するので、商品を陳列するための売り場には、ごく限られたスペースしか残されていない。内覧会に招待されているひとのなかで、わたしは明らかに最年長者で、唯一のネクタイ組であった。その場に居合わせていることにすこしばかり違和感を覚えたが、めげずに店内の観察を続けた。
どなたか(たぶんファッション業界では有名人?)がインタビューを受けている間をかまわず、陳列・展示されている商品に触ってみた。新品ながら、敢えて洗濯機でウォッシュしたシャツが数枚、スチールの陳列バーに吊してあった。日々の生活の中で使用される素材としてのモノの肌触りが、何気ない陳列法から伝わってくる。男性モノと女性モノは半々くらいか?
「アンダーウエアなどは女性ものを中心にセレクトされているので、今回(三田真一セレクト:4月23日~5月22日)は、女性向けの商品がやや多いかもしれません」(プレス担当、北沢みさリーダー)。
「ユニクロプラス」で試みられているように、ファーストリテイリングの店舗展開の方向性はこのごろ、斬新で個性的なデザインと商品カテゴリー(靴など)の拡張に向いている。アイテム数が拡大しているためか、ユニクロの店舗には、自己増殖を続ける商品を詰め込みたいという意思がかいま見える。売り場そのものが、わたしには商品を探索する空間としてやや広くなりすぎた感じがする。どの売り場に足を向ければよいのか?その中からどの商品を選びとればよいのか?
創業以来、ユニクロは“Help Yourself”(お好きなように!)を標榜してきた。だから、ユニクロの売り場は、「消費者選択の自由」(JFKに由来する消費者主権の思想)を前提に成立している。“買い物に余計なお節介はいらない”がユニクロの強い信念であった。たしかにそうではあるが、せっかく作った大切なアイテムが、他の多くの商品の山に埋もれて、置き去りにされてはいないだろうか?消費者にとって、ユニクロの売り場の編集方針が“親切”でなくなっているという懸念はないだろうか?
ここまで書いて、おわかりいただけたと思う。SELEQLO(月刊誌relaxとのコラボ)の試みは、ユニクロの基本思想と真っ向から衝突する挑戦なのである。青山店に来店する顧客に対して、商品選択の自由をユニクロが選んだ3人のスタイリストたち(三田真一、Moriyasu、長谷川昭雄)に委ねて欲しいと主張しているわけである。
SELEQLOが提案する新しいユニクロの理念は、つぎのようなものである。スタイリストたちの視点でセレクトされた商品は、それらが日頃は見慣れたユニクロの商品であっても、彼らのテイストにしたがって再編集された売り場に置いてみれば、同じ商品がまたちがった光を放つかもしれない。そんな風に、絞り込んでコンパクトに編集されたSELEQLOの空間からは、新しい発見とちがった商品アイテムの発掘が期待できる。
相矛盾する2つのコンセプトが人々に受け入れ可能なものなのかどうか。当面の結論は、30日後の5月22日に出ることになる。その前に、是非とも北青山のSELEQLOに立ち寄ってみよう。
(http://www.uniqlo.co.jp/news/release/n20050419143721.html)