日本語のメールがすぐに送れたようなので、わたしのHPも覗けているはずである。大関は元ゼミ生でもある。同じく法政出身の旦那さんが先月ロンドンに赴任したばかりであったが、約一ヶ月遅れで、元気な息子さんを引き連れてイギリスに渡っていった。

 MPS本部での交渉がうまくいったので、16日の午後は半日時間が空いた。通訳の山本清子さんと松島専務理事と三人で、古都デルフト(Delft)の散策を楽しんだ。


帰りのフライトJL412がスキポール空港を離れるまでは、まだ約5時間ほど残っている。運河沿いを歩いて、修道院の庭でお茶(+ケーキ)を飲んだ。セントラムの駐車場に戻ったところで、ちょっと気になる店に出会った。いつものことだが、直感的に人が集まっている店には目がいってしまう。「H&M」というファッション衣料店と「Watsons」(香港のバラエティ・ドラッグストア)が買収した「××vat」(店名不詳)という店である。
前者はとくに気になって仕方がなかった。デルフトのショッピングセンターにあるその店H&は、1Fが子供服、2Fが女性カジュアル衣料品のフロアだった。ふつうは、1Fに子供・ベビー服などは置かない。よく見ると・・「センスの良い」西松屋だった。デザインが良いのに、値段が安いのである。身長別に配列された子供服は、一着1000~2000円前後である。二階にも、若い女性がたくさん入っている。一着3000~5000前後である。子供服ほどには安さは感じられない。しかし、売り場はすごく見やすい。
 同行の松島さんと、生産国のタグをチェックした。先週ミラノに旅行した松島さんも、欧州全域でよく見かける店舗らしい。松島さんの奥様は、ブランド品を狙うので、H&Mにはあまり興味がないとのことであった。タグを調べていくと、出てくる出てくる。世界中の国のリストが出てくる。バングラディシュ(インドではない!)、チャイナ、ウズベキスタン、東欧諸国。世界中から商品が調達されている。ロットは、多くもなく少なくもない。ザラよりは多くて、ハニーズよりは少ない。副産物に出会ったと思ったので、さらに詳しく調べてみている。
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 ネットで調べてみると、本社はスウェーデン・ストックホルム。1947年の創業である。今年に米国NY進出、現在はドイツを中心に欧州22カ国に店舗がある。企業のイメージは、なんとなく同郷のIKEAを彷彿とさせる。
 創業者は、現在社長のRolf Eriksen氏。ご本人はかなりの高齢と見られるが、事業そのものは非常に若々しい感じを受ける。たぶん急成長をしてこなかったのか、わたしのアンテナにはこれまで引っかからなかった。不思議である。
 オランダの英語サイト(H&M.com)に接続してみた。松島さんが言ったように、欧州一帯で店舗数が1244(2005年)。ずいぶんと数が多いのである。基本は直営店方式のようで、売上高約1兆円(718、85億クローネ、1クローネ=15円で計算)である。2003年度の世界小売業ランキングにはのっていなかった(少なくとも15位以下である)。
 企業理念(corporate philosophy)は、以下の通りである。同社HPからそのまま引用する。(http://www.hm.com/corporate)
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 Fashion and quality at the best price
Our business concept is to give the customer unbeatable value by offering fashion and quality at the best price. To be sure we can offer the latest fashions we have a design and buying department that creates our clothing collections.

We ensure the best price by:
· having few middlemen
· buying large volumes
· having extensive experience of the clothing industry
· having a great knowledge of which goods should be bought from which markets
· having efficient distribution systems
· being cost-conscious at every stage

We put a lot of energy into ensuring and improving the quality of the goods. We also have the resources to carry out thorough tests and regular quality controls. In addition to good quality products, our quality concept also requires the garments to be manufactured without the use of environmentally hazardous chemicals or harmful substances and to be produced under good working conditions.

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 誰が見ても、SPAコンセプトである。欧州のファッション業界の基準からしても、かなりベーシックな商品を取り扱っているように見えた。ベーシックな衣料品を取り扱ってきたので、ブランド品中心の欧州では、これまではあまり注目されなかったのかもしれない。いまはザラ(Zara)が目立っているが、わたしはH&Mのほうが日本の小売業には脅威に見えた。
 というのは、帰り際のスキポール空港で、デルフト店とは全く異なるアクセサリー店をH&Mが展開していたからである。空港店は、同じアクセサリーでもすごく値段が安い(一点が3~5ユーロ:500~700円)。旅行客の衝動買いを誘うには、ちょうどよい価格帯である。同時に、わたしの目には、デザインがそんなに悪くないように思えた。
 わたしにしてはめずらしく、ネックレス、ピアスなど、おみやげに11点も買ってしまった。とはいっても、トータルでわずか60ユーロである。一万円もしないのである。デザインセンターは、ストックホルムにあるらしいが、調達は明らかにローバルである。それも質の良いバイヤーを抱えていることが推察できる。北欧のセンスなので、これがちょっと米国やフランスとは異なっている。ドイツでもっとも店舗数が多いというがうなずける。