日本の国力と地位低下: タイ国バンコク市から

チェンマイ花博(チェンマイ市)から首都バンコクに戻ってきました。NHKでも、女王様が出席された開会式の模様が放映されたようです。



 日本からのメールでそのことを知りました。護衛の車が前を通ったのは確認したのですが、会場の沿道からは女王様のお顔を拝見できませんでした。
 タイは表向きは戒厳令下にあります。なので、チェンマイ空港のセキュリティチェックはずいぶんきびしかったのです。しかし、本当のところは、10ヶ月前に来たときと街の雰囲気はあまり変わっていません。この国で数ヶ月前にクーデターがあったとはとても思えませんでした。

 チェンマイでは、花博会場を見た以外に、齋藤正二さん経営の「セトコンファーム」を訪問しました。このごろの齋藤さんの口癖は、「日本はもはや世界の一流国ではなくなった」です。その心は・・・齋藤さんの主力商品である植物球根(クルクマ、カラジウムなど)の主たる輸出先が、日本から欧米に大きくシフトしているからです。消費力という点で、もはや日本の市場シェアが30%を切りかけています。
 バンコクに着いた翌日に訪問した「中川農場」(唯一の日系ラン生産者、20ヘクタール、年間800万本生産、卸出荷業者として年間2000万本輸出)でも、日本向け輸出量は、このところ激減しているとのことです。
 日系企業の主力輸出国が、いまはイタリアとオランダなのです。ご本人が言うには、価格が安定しているからとのことです。しかし、わたしが見たところでは、実際は日本の購買力(したがって、価格プレミアム)がむかしほど大きくなくなったからです。その割に日本人は品質にうるさいから、タイ人にとってはもはやおいしい商売にならない。日本の地位(利益源泉としての)は、三番目から4番目なのでそうです。

 日本がふつうの国になったということです。結果として、タイ・バーツに対して、円が急速に安くなっています。親日の国であるはずのタイにとっても、欧米や中国・インドの重要性が明らかに高まっています。悲しいかな、国力と実力の低下が円の安さに表れています。
 (齋藤さん風に)「一流国でなくなる」とはどういうことなのか?簡単に言えば、海外の商品や労働力をむかしのように安くは調達できなくなるのです。通貨プレミアム、あるいは、通貨インフレが終わったわけですから、自分たちの実力にあった生活をしろと言うことになります。
 外国の安価な労働力や資源をうまく利用して、いつまでも贅沢はできないわけです。身の丈にあった生活しなさいということなのです。日本が置かれている現実がこれです。国内にいると気が付きませんが、貿易の世界で動いている人は、敏感に日本の国力低下を感じています。

 さて、そんな日本国がODA(対外経済援助)をしている余裕などそろそろなくなるでしょう。いまがそのタイミングかもしれません。日本は政治的な影響力を失いかけていますが、このままだと経済的なプレゼンスも危うい状況にあります。本日はめずらしく、ちょっと悲観的な論調で終わります。
 本日の午後からは、アジア最大規模になりそうな、タイ新国際空港のバックヤードに入り込みます。JALの取り計らいで、国際物流の仕組みを見てきます。「タイフラワーセンター構想」の実現に向けて行ってきます。帰りは夜遅くになります。有馬温泉、バンコクの夜は長いです。昨日は深夜3時帰宅の同僚もおりました。