外気温39度のドバイにいる。滞在2日間は、ドバイに拠点を持つ物流卸会社を訪問している。FlowerExchangeとBlack Tulipグループ。ケニアに生産拠点をもって、中東やロシア、アジア市場を狙っている上位2社だ。ケニアの展示会などでも大きくブースを構えていた。
「ドバイフラワーセンター」(バーチャルな意味でのセンター)は、ロジスティックスの実験場である。アフリカに生産基地をもつ花会社が、物流と営業上の効率からHUBのドバイに拠点を持っている。ケニアからドバイまでは4時間。ドバイからロシアまでは4、5時間。アジアやオセアニアも近い。
アフリカやアジアから北半球の消費者に、切り花を空輸するときのネックは物流費だ。販売価格の30%が物流費だと言われている。だから、物量を集めることができれば、輸出には非常に有利になる。自社のチャーター便を仕立てて(最低1t/一回の輸送)、場合によっては野菜などとも混載にする。
FlowerExchangeは、実際にケニアのVegflora社(会社名が「野菜と花」)と提携して、それを実行している。本日、これから訪問するBlack Tulipグループは、ケニアに10か所の大規模農場を所有している。両社の動きを見ると、わたしたちがこのツアーで観察してきた先進国の花市場の未来が予言できる。
英国のスーパーでは、明らかに、花への需要が飽和していた。Kenyaからの輸出が供給過多になり、そして欧州経済がよくないこともあり、価格競争が激化していた。Tescoの花売り場が、品質と品ぞろえの両面で”乱れて”いた。日持ち保証は当たり前のものになりすぎていた。
価格を落として(Finestのラインでも、20ポンド以下)、国産を全面に打ち出そうとしている。その傾向は、SainsberyやM&Sで顕著だった。M&Sは、衣料品をカテゴリーから切り離そうとしているくらいで、プレミアムラインの食品に集中しようとしている。花の品質が良いのは、そのせいだろうと思う。
もちろん、英国人が花を買わなくなったわけではない。それとは逆で、4店舗のフィールドワークでデータ収集したが、来店客の8%~20%が花束を購入していた。スーパーにおける花に購入率は落ちていない。しかし、飽和感があるために、モノブーケが減少してミックスブーケが主体になったが、十分な利益がとれていないように見えた。
ケニアなどの生産地は、そのあおりを受けている。その解決策の一つが、新しい市場を求めることなのだろう。ドバイフラワーセンターの試みのその延長線上にある。
しかし、インド、中国、日本、オーストラリアなど、輸出先国としてみると、たくさんの克服すべき課題を抱えている。数量がまとまらない(市場が小さい)。消費ニーズが異なる。自国内に生産拠点を持っている。
こうした障壁を乗り越えて、ケニアやエチオピアが新しい市場を開拓することができるだろうか?今回は、その確認のためのツアーだった。答えが得られたわけではない。しかし、ケニアの実際のビジネスを握っている、オランダ人やフランス人たちの逞しさには感嘆するばかりだった。
前回(2011年)と今回(2016年)のアフリカツアーで、わたしは次のような感想を持った。アフリカの農産物生産国は、究極的には、第二次世界大戦前の状況とは構造的に大きくは変わっていない。KenyaやEthiopiaは、欧州列強から政治的に独立したが、70年を経過しても経済的には依存の関係にある。
花やコーヒー豆の売れかたを見ていると、それを強く感じる。欧米の消費需要と消費者の好みに、アフリカの産地は振り回されている。それに加えて、欧州諸国は、関税の問題(免税のための市場開放要求)や環境的な要望(温暖化対策)、強い労働規範を求めてくる。
とりわけ、ケニアはきびしい政治状況にある。右派と左派が僅差で、次回の選挙は政権はどちらに転ぶがわからない。世界の政治もまた、民族主義、反市場主義に向かっている。そのなかで、大量生産の輸出型農業を維持していかなければならない。それ以外には生きる道はないが、経済の実権は欧州の資本が握っている。その動き次第なのだ。