12月20日、公正取引委員会で「景品表示法の改正」(案)に関して学識経験者として意見陳述を求められた。以下は、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の一部改正(案)に関する公聴会公述(公正取引委員会)について「賛成」の意見陳述をした内容である。
公正取引委員会から提案された<景表法の改正案>は、「商品に付加する景品(総付け景品)の価値を、商品が千円以下では最大200円に、それ以上では商品価額の20%を上限とする」という提案であった。
当日は、公正取引委員会の大会議室で、約100人の傍聴人が詰め掛けていた。メディア関係者と消費者団体からの傍聴者がほとんどと思われる。開会に先立って、会議室の撮影が許可されたのがおもしろかった(印象としては奇妙だった)。
わたしはその直後に大学で授業があったので、2時開会のあとすぐ、委員長の説明のあとで最初に意見陳述の時間(5~10分)をいただいた。最初の4人(北海道学園大学教授、百貨店協会理事長、チェーンストア協会専務理事など)は、条件付きながらすべて「賛成」であった。残りの6人はわからない。最終的な結論は、現段階で不明では。いずれにしても、規制緩和の流れの中で、遅ればせながら、景表法も改正の方向に向かうのではないかと思われる。
<小川の意見概要>
法政大大学経営学部教授(大学院IM研究科教授)
小川孔輔 2006.12.20
基本的に原案に賛成します。
以下では、その理由を簡潔に述べさせていただきます。
1 消費者とメーカー(流通業者)との情報格差
従来、市場経済の中で、一般消費者は無知であり、守られるべき存在と考えられてきました。商品やサービスの選択にあたっては、したがって、メーカーや流通業者のマーケティング政策を政府など政策機関が消費者保護を目的にガイドすべきだという前提があります。いわゆる、情報的に不利な立場にある消費者を手厚く保護するという考え方です。
しかし、とくにネット社会の出現により、そして、世界中で消費者教育が充実したことにより、旧来の企業と消費者の間にあった「情報の非対称性」はぼ消滅したと考えてよろしいかと考えます。消費者者は、企業のさまざまなマーケティング施策に対して、合理的に自己決定できるものと想定してかまいません。そのために、商品に付加して景品を選択する場合でも、購入・非購入の決定は、消費者に任させてかまわないのではないでしょうか?
2 価格競争手段とプレミアムプロモーション
デフレの10年の影響もあり、価格プロモーションにおいては、小売業の現場では20~30%の値引きがごく日常的に行われています。プレミアム(景品)に関しては、従来から商品価値の10%が上限になっていますが、その根拠は疑わしいものになりつつあります。価格プロモーションと非価格プロモーションは、「値引き効果」と「付加価値効果」を目指した点で多少の違いはあれ、基本的には、対象商品の実質ディスカウントという点で大差はありません。
とくに、景品の割増価値を10%に押さえておく根拠はないと考えます。改正案のように、とくに上限枠を設けるかどうかについても、あまり根拠はないとも思います。
3 メーカーの市場支配力
この20年間で、メーカーの市場支配力が弱くなった点も、さらにひとつ根拠になります。景品プロモーションには、市場での競争(活性化)を促進する効果があります。メーカーには、あるいは、小売業者に、もっとマーケティング施策上で自由を与えてよいと考える所以でもあります。
以上