簡易認知度調査:モンソー・フルール自由が丘店の事例

フィールドワークをはじめてから頻繁に用いている手法を紹介する。「簡易認知率調査」という方法で、もともとは小山孝雄さん(小山孝雄経営研究所代表)が草案して実務でも使っているものである。


『チェーンストアエイジ』の中でわたしが担当しているコラム「マーケティング・フィールドノート」(2007円11月15日号)に、以下の記事の掲載を予定している。事例として、今年の夏(8月)に行った「モンソー・フルール(自由が丘店)」の事例を用いている。
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 お店も商品も魅力的なはずなのに、新規に出店しても、なかなか顧客がつかめないまま売上が思うようにあがらないことがある。そのようなときに、ぜひ試していただきたい調査法がある。わたしどもが「簡易認知度調査」と呼んでいる手法である。とくに、適度に名前が知られているチェーン小売店で、出店後のフォローアップ調査として有効である。
今年3月にフランスから進出してきたフラワーショップのチェーン「モンソー・フルール (Monceau Fleurs)自由が丘店」の事例を用いて説明してみる。ちなみに、モンソー・フルール(1965年創業)は、フランスを中心に欧州で126店舗を展開している売上高220億円花小売業チェーン(世界第2位)である。今年3月に日本進出、自由が丘(世田谷区)と小石川(文京区)に直営店を2店舗展開している。現在、全国展開をめざしてFCを募集中である。
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 モンソー・フルール自由が丘店(写真の☆マーク)は、東急東横線自由が駅から歩いて3分の繁華な通りに面している(筋向いに無印良品)。日中の時間当り通行量は、平日で約1千人、土日で約1500人である(4日間の平均値)。出店直後はやや苦戦をしていたが、フランス風の素敵な店構え(濃紺のテントと特徴あるロゴ)と華やかで値ごろ感のある花束(480円と580円の価格ライン)が浸透してきた結果、夏以降は売上が順調に伸びている。しかし、フランス本国と比べると認知率そのものが低いため、本来期待できるはずの近隣顧客を逃している可能性があった。確認のために実施したのが、簡易な認知度調査である。

 自由が丘の駅周辺は、東横線と南武線をはさんで、駅周辺は性格の異なる4つの地区に分かれている。仮にこれらをA、B、C、D地区と呼ぶことにする(写真参照)。学生が調べたところ、A地区は商業施設、B、D地区は住宅街、C地区は観光スポットであった。それぞれの地区で、通りがかりの人をつかまえて、「この辺で花屋さんを知っていますか?ご存知でしたら、そのお店の名前は?」とたずねてみた。ついでに、「普段のお花の購入頻度」を質問してみた。調査時間はほんの1~2分程度である。こざっぱりした身なりの学生がやると、地元の人でも案外協力してくれるものである。
 8月21日(火)と26日(日)の2日間で、190サンプルを集めた。ブランド認知率は、A~D地区の順に、62%、74%、29%、56%であった。比較的高い数値である。グラフは地区別の切花の平均購入頻度(人数割合)を示している。C地区は観光スポットなので、認知率が低いのは仕方がない。問題はD地区である。切花の購入頻度が高い豊かな消費者が住んでいるにもかかわらず、相対的に店舗ブランドの認知度が低くなっている。東横線のガードが障害になって、モンソー店前を通過する可能性はもともと低い。しかし、新聞にチラシを折り込むなどすれば、来店率を高めることができそうである。同様な手法は、昨年度(2006年秋)、「青山フラワーマーケット」の綱島店でも実施して成功している。また、「エキュート大宮」でも、2005年の開業時に、応用事例として、テナントの認知率と来店比率を比較するために使ったことがある。簡易な方法ではあるが、さまざまなマーケティング施策、とくにプロモーション企画に有効である。

 <参考> お花購買頻度(自由が丘)
       A  B C  D
~年1・2回 43% 50% 71% 19%
~月1未満 26% 32% 14%  6%
~週1未満 26% 5% 14% 44%
週1以上 4% 14% 0% 19%