【柴又日誌】#156:「凶」を引き当てたときの男女のちがい

 本日の午前中のこと。柴又帝釈天に、3家族9人で初詣に行くことになった。帝釈天はわが家から歩いて、15分の所にある。いつもなら高砂駅から柴又駅まで、一駅だけ金町線に乗ることが多い。しかし、元旦なので電車が混んでいるだろうと予想した。人ごみを避けたいので、全員でぞろぞろ帝釈天まで歩いて行くことにした。それほどの距離ではない。

 

 この町(葛飾区高砂8丁目)に来てから6年目に入った。ふだんからマラソンの練習で、なんども帝釈天の周りを走っている。ふたりの男の子たちもランナーだから、帝釈天周辺の裏道はよく知っている。

 本日は、帝釈天の参道を通らずに、迂回して帝釈天正門にたどり着いた。お寺の南門から入って、すいているコースでお参りができた。小さな境内なので、多少混雑してはいても、すぐに門外に戻って参道に出て来れる。いつものことで、参拝が終わったら、おみくじを引くことになった。

 わたしを除いて、9人中8人がおみくじを引いた。まずは、神戸在住の長男の由さんが、「凶」を引き当てた。お札の内容は、最悪のご託宣だった。息子が引き当てたお札(ふだ)は、第六十七凶、、、

 「願望 かなわず」

 「病人 あやうし」

 「待人 来らず」

 「失せ物 出でず」

 「縁談 進まず」

 「売買 利なし」

 「其の他 万事 すすまず」

 

 続いて、由の息子の諒くん(小学校2年生)が、おみくじを引いた。包んである外紙が固くて、中のおみくじがなかなか顔を出さない。わたしが助けに入って、どうにか紙を広げることができた。

 諒くんのおみくじも、第五凶、、、 長男(由さん)が息子(諒くん)に凶の意味を説明している。同じ凶でも、諒くんのお札(ふだ)の説明文が、自分のとはやや違っている。

 「願望 叶いがたし」

 「病人 本ぷくしがたし」

 「待人 来らず」

 「失せ物 出でず」

 「縁談 見合わすべし」

 「売買 利あらず」

 「其の他 控えるがよし」

 よく読んでみると、大差はない。諒くんは、説明を聞いて帰り道でえらく落ち込んでしまった。わたしが何度なだめても、反応なしの無言である。わが家では、不都合な気持ちになった諒くんの心理状態を、「こじれる」と呼んでいる。こじれたまま帰宅することになった(*この時間では、すでに完全に回復しているが)。

 

 高砂で同居している2人の孫たちは、どららも「吉」と「半吉」だった。ところが、長男の長女の紗楽さん(さら、小学校5年生)も、見事に「凶」を引き当ててしまった。神戸組の母親(奈緒ちゃん)を除くと、なぜか神戸組は、4人中3人が凶だった。

 ところが、さらと諒くんは、凶を引き当てたあとの行動が正反対だった。さらは、凶のお札を境内の紐に括り付けると、つぎのおみくじを引くために、くじの「配布所」に戻って行った。

 再度のチャレンジで、どのくじを引いたのか詳細は知らされていないが、「凶」でなかったことは確実である。もういちど凶を引き当てたら、さらは絶対にまたくじを引き直そうとするはずだからである。その後、母親の奈緒さんと一緒に、帝釈天の参道でお店を覗いて、何かを買ってもらってるんるんで帰ってきた。

 神戸組の孫たちふたりのことだが、おそらく高砂のふたりでも、「凶」を引きてしまったら同じ行動に出るだろうと思う。お兄ちゃんの穂高くんはしごくめげてしまって、妹の夏穂はさらと同じにくじを引き直そうとするだろう。ただし、さらはさらっと引き直したが、夏穂はわんわん泣いわめいて、真継君(父親)を引きづって札所におみくじを取りに行くだろう。

 

 息子にご託宣(凶)の意味を丁寧に説明していた由くんのことだが、自分でもう一回、100円を払うつもりはなかったのだろうか?おみくじを引き直すつもりはなかったのだろうか?という意味である。夕飯の時、あとでこっそりと聞いてみたいと思う。

 ちなみに、わが家が3本、凶を引き当てたのを隣で見ていた老夫婦が、わたしに親しそうに話しかけてきた。「帝釈天って、おみくじで凶がよく出るお寺さんなのですか?」

 親しげに寄ってきた意味がわかった。ご本人たちも、去年はふたりとも凶を引き当てたのだそうだ。今年は、そろって二人「吉」が出たらしい。おめでとうございます!

 おみくじの結果は、やはり気になるものだ。なので、わたしは、30年ほど前から(日本で一番、凶の比率が高いと言われている「浅草寺」で凶を引いて以降)神社やお寺さんでは、運試しのおみくじを引かないようにしている。「運命は天からのご託宣にしたがうのではなく、自分で切り拓くものだ」と思っているからだ。本当は、凶を引くのが嫌だからなのですが。