リビングルームのソファーに『日本経済新聞』と『日経MJ』が山積みになっている。約1週間分。机の上には、『ダイヤモンド・チェーンストア』『ニューズウイーク日本語版』『日経ビジネス』が、こちらは約一ヶ月分、うず高く積まれている。チェーンストアは隔週刊行なので、11月から4か月分で7冊。
いまから、在庫一掃セールのような雑誌の読み方になる。物書きを標榜するひとりの文化人として、使ってはいけないフレーズだろうか? 午前中に、日経新聞とMJは読み終わってしまった。午後は、「難物」の商業誌に取り掛かる。記事が細かくて、雑誌のボリュームが厚いからである。
読了したいま、順番にコメントしていこう。
日経ビジネスの2月13日号は、製造業の国内回帰を取り上げている。題して、「Made in Japan 円安、経済安保で日本回帰 敗れざる工場」。予想通りの論調と事例の取り上げ方だった。事例も、熊本のTSMC、トヨタ自動車やアイリスオーヤマをはじめとした海外進出企業のいま。中国リスクと急激な円安が、製造業の国内回帰を後押ししている。
もちろん地方城下町(熊本)のような特需に沸く地方都市は、これからもしばらく雨後のタケノコのように現れるだろう。しかし、本命は、農林水産業はないかと思う。とくに農業と漁業だろう。
製造業は、海外からの安定的な供給と、国内生産をバランスさせるに違いない。農業は、実は円安の追い風をもっとも受ける産業である。なぜならば、価格と重量、そして商品の鮮度が命だからである。
もうひとつおもしろかった特集は、ダイヤモンド・チェーンストア(2022年12月1日号)の「冷凍食品」の特集だった。題して、「冷凍食品が各売り場になる日」。同誌で事例で取り上げていた企業は、①イオンリテール(@FROZEN、冷凍専門業態)、②ヨーカ堂)、③コープデリ(冷凍ミールキット)、④ローソン(冷食の商品開発)など。
コロナ禍前から、冷凍食品が食品スーパーやドラッグストアで売れていた。それでも核売り場を構成することはなかった。ターゲットは、共稼ぎ世帯に限定されていた。しかし、いまやコンビニでも、3尺のリーチインケース1本は、冷食専門にレイアウトされている。ドラッグストアに行けば、壁面が冷食コーナーになっている。いまや冷凍食品は、量販店の売り場で主役に躍り出ている。
冷食のコーナーが売り場の核になりそうな日が来ていることは、2022年の冷食の売上が、2019年比で115%に伸びていることからもわかる。それに比べて、レトルトや惣菜は109%。食品全体では102%である。背景にあるのは、消費者の使い分けが進んでいることと、急速冷凍の技術が進んで冷食が美味しくなったことだろう。
先日、グリーンローソンで冷凍弁当を調達した(‐20℃)。4種類ほど自宅に持ち帰って、家族と解凍後に試食をしてみた。常温の弁当と味はさほど変わらない。解凍にやや時間がかかるが、従前のもの(冷凍食品)より急速に冷凍できるのか、味の劣化はほとんどない。
一番の課題は、ご飯とおかずに、やや解凍ムラが出るところだ。それでも調べてみると、AIレンジ(パナソニック製)が登場していた。10万円+アルファーとやや高額になるが、値段は量産が進めば安くなっていくだろう。フードロス対策のためには、常温弁当より、冷蔵弁当の方がコストパフォーマンスが高い。環境にも優しい。
というわけで、スーパーやドラッグより、フードロス天国のコンビニのほうが有望な商材が開発できそうだ。ちなみに、冷凍デザートや農産加工品まで入れると、市場規模は1兆円を超えているようだ(2021年:1兆684億円、富士経済調べ)。数年のうちに、2兆円市場に広がりそうな気配がある。
最後の注目記事は、ニューズウイーク日本語版の「日本のヤバい未来、2050」(2月7日号)。約25年後に起こるかもしれない、日本社会の人口減少、イノベーションの衰退を扱った号である。
NWJの編集チームは、製造業、建設業、鉄道業に起こる働き手不足の先を憂いている。最後に、警察や自衛隊、消防署や海上保安庁の若手が不足することを指摘している。その結果、広い意味で国民の安全が担保されないことが懸念材料になると主張している。わたしも東京消防庁の消防団員である。わが国の地域の安全を担う、消防団員の不足は問題だと思っている。
人手不足のことを言うならば、農業の担い手が不足のことを、もっと大々的に取り上げるべきだろう。片手落ちだと思うが、編集チームは、食料の安保保障はなんとかなるものだと考えているようだ。
ところが、この特集を離れてみると、欧米の大変さと中国などアジア諸国の未来を透視してみれば、日本の未来はそれほど暗いものではない。日本は30年間、ずいぶんひどい目にあってきた。アベノミクスに対する批判もあるが、国際政治経済的には、ポジション的に極めて有利な立場に立つと論ずる識者もいる。わたしもその立場に与する論者の一人である。
なぜならば、そもそも雑誌文化メディアの特徴は、危機を煽ることで部数やアクセスを伸ばそうとするからである。実際は楽観的なシナリオで世の中が動くと書いても、販売部数やアクセス数は伸びない。だから、目を覆うような事件や記事が受けるのである。人々も、グッドニュースよりバッドニュースに反応する。
というわけで、ほぼ1日かかって読み終えた新聞と雑誌を小脇に抱えて、いまから神田小川町に出ていくことになる。「オフィスわん」のギャラリーには、経営学部小川ゼミの第9期生が9人集合することになっている。
Barブリッツに集合する時間は、夕方18時。同期会がはじまってから、本日はある調査を実施することになっている。その結果は、後日ブログで紹介することにする。簡単に言うと、北大塚のグリーンローソンで購入してきた「冷凍弁当」を試食することになっている。
弁当の味見とオペレーションのチェックが、本日の特別イベントである。雪は上がって、氷雨になっているようだ。そろそろ出かけることにする。