『日経ビジネス』は、正直に言うと、それほど評価していない雑誌のひとつである。それでも、新しい情報が詰まっているので、特集によっては読んで参考になることもある。新しい視点を提供してくれるという意味では、残念ながらだが、『ニューズウイーク日本語版』のほうが数段優れている。
ところで、11月7日号の第一特集は、「ボード3.0の時代:社外取締役を再考する」だった。ボード1.0は、直接金融の組織(銀行、友人)が社外取締役に就任する「革新の支援者」が活躍する時代。ボード2.0は、アクティビスト集団など外部組織が大企業組織を監視する時代だった(性悪説)。
監視団(モニタリング人材)としての社外取締役の役割が2.0だとすると、ボード3.0は知識ある専門家が革新の支援に乗り出すフェーズである。ボード3.0は、コロンビア大学のロナルド・ギルソン教授が提唱しているコンセプトらしい。わたし自身は、4年間だけ社外取締役の経験がある。ボード3.0の見方はわかりやすい。概念提案には賛成である。ボード2.0のあり様は、実に悲惨だった。
いま大きな企業組織が必要としているのは、下手な中立性ではない。
性悪説による監視の必要性はもはやなくなっている。いまや時代遅れであり、百害あって一利なしの不要な機能である。それに対して、ボード3.0は、外部の知恵と性善説に基づく組織革新を表現している。それを実現するのが、専門家や有能な経営者によるボード構成メンバー(有為な社外取締役)である。
日経ビジネスの特集は、その意味では、取締役会運営の時代の転換点を伝えてくれていた。たまには、日経ビジネスを読むべきことを知らせてくれている。しかし、いつもながら残念なのは、経営のコンセプト提唱は、やはり「出羽守(でわのかみ)」で輸入品だったことである。日本の経営学者は、どうも相も変わらずの「舶来志向」が収まらない。残念至極ではある。