大学院生のレポート採点(ビジネスイノベーター育成セミナー:個人課題#2)

 昨日から、大学院生の個人レポート(#2&#3)を採点している。<課題#2>の採点をとりあえず終えた。54枚のレポートを読んだ感想を以下に記すことにする。<課題#2>は、「テキスト『True North』(89ページの演習1,2,3)に答えよ」というものだった。

 

 3つの質問は、本書のテーマでもある「本物のリーダー」への旅について、学生自身の経験を尋ねている。プライベートな事柄の開示にあたるので、ブログでのレポート公開は避けるようにしてきている。ただし、誰が優秀レポートを書いているかは、知らせるようにしたいと思う。

 以下は、まずは各質問に対してどのようなレポートが提出されたかを示してみたい。採点者であるわたしの主観的な印象記ではあるが、ここ数年の学生とはほぼ一致したレポートの傾向が見て取れる。

 

<Q1>

「これまでの人生経験を振り返って、誰に、どのようなできごとに、どのような経験に、自分自身と自分の人生は最も影響を受けたと思いますか?」

 影響を受けた人物としては、肉親(父母、祖父)が半分で、会社の上司、学校の先生と続く。両親の影響は、ポジティブなものばかりではない。その後の人生で、父親との関係はネガティブな影響も含まれている。おもしろいことに、母親と祖父母の影響は、その後の人生でほぼプラスに作用している。

 上司については、反面教師の傾向も見うけられる。興味深かったのは、外国人との接触(近所の住人や旅行先)の影響が少なからずの人に見られたことである。昨年(2021年度)の授業で特別講師をお願いした、小林佳雄氏(物語コーポレーション創業者)も、米国放浪時の異文化体験が、「Smile&Sexy」という企業理念を発想する元になっている。

 出来事としては、肉親や友人、部下の死、交通事故や病気が影響が大きいことがわかる。学部生のレポートでもよく登場するのだが、部活や発表会、大きなプロジェクトの成功と失敗が、各人の人生の転機になっている。

 

<Q2>

「リーダーシップを育むうえで、これまでの人生経験から得た最大のインスピレーションと情熱はなんですか?」

 この問いに対する答えに、特別な傾向はない。人生経験は各人各様である。ただし、読み手であるわたしから見ると、チャレンジ精神旺盛な人間と、そうでもない学生の間には、明らかに経験値には差があるように思う。冒険心溢れる挑戦者には、長期的に見れば、それなりの積み重ねが残されているように見える。

 社会人で大学院に再入学してくる学生は、その決断自身が人生における挑戦である。きっかけは、何らかの形で、<Q1>の影響の結果であるようにも思える。ユニークな研究科を創設したことが、皆さんの人生に大きなチャンスと影響を与えることになったようだ。

 「情熱」の出所は、社会的な関心(世の中のためになることを成し遂げる)と個人的な冒険心(理想への再挑戦)だと見られる。テキストでも随所に記述されているように、「インスピレーション」は、突然のタイミングで訪れるものだ。

 

<Q3>

「過去に経験した失望や失敗のせいで今でも、何かしらの手かせ足かせを感じていますか?それとも、それらを見つめなおして教訓を引き出していますか?

 時間を逆戻りさせることはできない。過去の失敗や失望の体験は、洗い流すことができない。だから、学生たちの多くは、前向きに教訓を引き出そうとしている。それでも、起こってしまった失敗や悲劇の後遺症を抱えながら、いまも生きている学生が意外に多いことを、レポートを読みながら知ることになった。

 回答の多くが、本研究科への進学が人生の再挑戦になっていること。また、若いころの希いを実現するための通過点になっていることであるを伝えている。そのことを改めて確認したことは、わたしにとってはうれしいことだった。やや驚きでもあった。なぜなら、そうした機会は、おそらくは普通のMBAコースでは与えられなかったかもしれないからだ。

 

<優秀レポート>

 なお、<課題#2>に関しては、3人からのレポートが評点では優秀作品に該当している。

1 荒木真喜子さん

2 原 裕淳さん

3 森 俊介さん

 

*今回の課題に関しては、プライベートな経験の記述もあるので、ブログには転載しないことにしましょう。

 それにしても、皆さんの人生の舞台劇の一幕を、垣間見ることができました。教師の役得ですね。