「女もすなるファッションといふものを、男もしてみむとてするなり。」(ジェンダーレスファッションの新展開)

 紀貫之(土佐日記)の逆パターンですね。性別に関係なく、ファッションがニュートラルになる傾向が少し前から見られていました。わたしが、ユニクロの女性ものセーターを選んだように(11月8日のブログ記事)、女性たちも、男性ものでボディーラインが目立たない大きめのパーカーやセーターを選ぶ時代になっています。

 「『ジェンダーレスファッション』がコロナ禍で人気の理由とは」( 田中慧氏)が、先ほど『ダイヤモンドオンライン』で配信されていました。つぎのような書き出しで始まる記事です。コロナ禍だからではないと思います。

  

 アパレル各社が性別に関係なく着られるジェンダーレスの商品を次々に展開している。背景には、ファッションの好みに対する性差がなくなっていることが挙げられるというが、今後もさらに浸透してビジネスチャンスとなりうるのか。ファッションジャーナリストの宮田理江氏に聞いた。(清談社 田中 慧)

 

 「アパレル各社がジェンダーレス商品を展開」という見出しで、「今年の4月には、「23区」を展開するオンワードホールディングスが男女共に着られるアイテムをそろえたブランド「IIQUAL(イーコール)」を立ち上げており、三陽商会のセレクトショップ「LOVELESS(ラブレス)」も9月から男女兼用のニットやスエットなどを発売している。

 無印良品でも、2019年から性別や年齢、体形に関係なく着用できるサイズ感の服を売りにした「MUJI Labo」の服が展開されている。2021年上半期の日経MJヒット商品番付で「ジェンダーレスファッション」が東の前頭に入っていることなどからも、着実に浸透し始めていることがうかがえる」となっている。(後略) 

 

 こうした流れは、どちらかといえば、対象が女性になっています。わたしは、むしろトレンドとして本命なのは、わたしのようなやわな老人や男性の若い子が、女性ものを着る方向だと思います。

 「男性が女性服をまとう例はまだ極めて少ないものの、徐々に男性の装いにも変化が起こりつつあるという。大人の男性がピンクや花柄などを違和感なく取り入れるファッションが、以前より少しずつ広がりをみせているように思います。レースやシアー素材のシャツや、パールのアクセサリーなど、これまでの男性のワードローブにはなかったデザインを取り入れるブランドも出てきました」(ダイヤモンド・オンラインの記事)

 

 わたしの場合も、ユニクロで素敵な女性ものを発見しても、これまではかみさんに許してもらえませんでした。ファッションにはなんとなくの禁忌(タブー)がありました。ですから、なんとなく街中を着て歩けなかったわけです。これが逆転するようになったわけです。この流行の限界点は、わたしのような体形の男性でないと女性ものが着られないということです。

 「体形的な特徴のために、マーケットの規模としては一定の範囲にとどまるだろう」と専門家は予測しています。しかし、わたしはそうは思わないのです。それとは逆に、女性ものを着たいがために、やや太り気味の男性がダイエットに励むようなるだろう。とうのがわたしの見立てです。

 近世以前では、欧州の某国の男性がスカートをはいていた時代があります。江戸時代を見てみれば、「女形を美しく演じる男性」がいたわけです。そのような男性がまとうファッションが、当時の社会から疎外されていたわけではありません。ファッションの王道の一つだったわけです。

 「ジェンダーニュートラル」「ジェンダーフリー」なのではありません。男性も女性も、積極的に反対の性が普遍的に有しているテイストを自分に取り込むようになるのだと思います。