葛飾区高砂の自宅から、「サミットストア五反野店」(足立区)まで走っていった。提携先の「(株)ムロオ」(本社:呉市)の物流センター経由でわずか1時間。手元のIphoneで測定した走行距離は、8.1KM。店舗の訪問目的は、インファームの野菜売り場を視察するためである。
ご存知ない方のために説明すると、「インファーム」(Infarm)は、独ベルリン生まれの「都市型室内農場」(Indoor Urban Farm)である。欧州の大都市を中心に(一部NYなど米国でも)、都市部の食品スーパーやレストランで、リーチインクーラーのような販売什器(植物栽培ユニット:unit)を設置して、主としてハーブやレタスのような葉物野菜を販売している会社である。
日本のビジネス(インファーム・ジャパン)は、法政大学経営大学院の同僚でもある平石郁生講師(ドリームビジョン社長)が代表者として事業運営を担っている。現在は、JR傘下のスーパー紀ノ国屋(2店舗)とサミットストア(1店舗)の計3店舗で、ハーブやレタスなど葉物類の野菜を販売している。いまは3店舗で実験段階ではある。しかし、昨日の店頭観察からは、インファームの日本事業の将来に関してきわめてポジティブな感触を得た。
本国での創業の経緯や欧州事業の現状などについては、筆者の『食品商業』の連載載記事(上・下)をご覧いただきたい。視察訪問したサミットストア五反野店は、栽培ユニットの売り場設置からは2週間ちょっと経過していると思う。
手作りランチの後、お昼過ぎに自宅を出た。ムロオの東京営業所経由で五反野店に到着したのは、昨日の午後14時半少し前。リュックサックを背負い、ランナー用のサングラスをしている。ランニング姿ですぐに観察を始めたいと思った。結構怪しい格好だけれど、だからこそ、こちらから店員さんに声をかけようと思った。
サミットストア五反野店のフロントから入ってまっすぐに歩く。入口からすぐが野菜売り場になっている。正面にリーチインクーラー型の栽培ユニットが設置されているのを発見した。早速、店頭観察を始めたいと思ったので、目の前で野菜を補充している店員さんに声をかけた。店の人に変に警戒をされないため、こちらから質問するのが常道である。
「このコーナーを運営している人物の友人関係者だけれど、栽培ユニット(クーラーの中の植物)は販売していないのですか?」と質問をする。彼の答えは、「週に2回、マネキンさんが来て、14時から販売してます」。すぐ前を見ると、販売用の什器(黒色のコンテナ、各6穴)に、「火曜日と金曜日の14時から販売します」と書いてある。
もう一人に別の質問をしてみたが、インファームのことはよくわかっていない。というか、店員さんが興味をまったく示さないのには驚いた。どうやら「委託販売」(欧州本社でもスーパーとは同じ契約方式を採用)なので、栽培システムがよくわかっていないようだ。補充員が週二回、巡回してくるようになっているのだろう。
さて、14時半少し前から、トマトとレタスが置いてある常温の野菜売り場で観察を開始。反対側の棚では、冷蔵ケースで野菜(レタスなど)が売られていた。販売されているのは、パクチー、イタリアンバジル、クリスタルレタス(いずれも売価は198円)。
<観察記録>
・14時28分観察開始。
・14時30分、60代のご夫婦、イタリアンバジルを購入。198円1個。
奥さんの方の言葉で、「育てる、根がついてるから」と。リピーターに見える。ほとんど迷わず購入。
・14時33分、30代男性、イタリアンバジル、198円1個。サラリーマン風、少しだけ逡巡。
・14時42分、50代の女性、パクチー、198円1個。
(非購入)14時45分ごろ、夫婦2組がじっと見ていた。これが、典型的なパターン。
〜15時 2.1.1.1、この時間帯は、若い男性が立ちどる、3人。一人購入
・14時56分、30代女性、パクチーとバジル、2個396円。かなり迷って、商品を出したり戻したりして触っていた。その間、30秒ほど。
・14時58分、20代男性、イタリアンバジル、198円1個。インテリ風、料理男子に見える。パスタに入れるのだろうか?慎重に商品を吟味して購入。
<所見>
・30分間で5人(5組)が購入。年寄り夫婦づれと若者が多い。
①30分で5人購入(6個)。一時間当たりの販売額2400円(端数切捨て)
売れ筋は、やはり予想通りでイタリアンバジル、パクチーの順番か?
クリスタルレタスは、隣にある常温の大玉レタスが118円だから売れない。
②10時間営業では、2万4千円(推測)。12時間営業だと、3万円弱になる。
③電話での聞き取り調査(販売金額について)
食品スーパーの基準値では、日販2~3万円は良くもなく悪くもないレベル
コンビニの冷凍食品は、同じスペースの販売什器で日販5千円程度
それでも、立ち上がりとしては、決して悪い数値ではないようだ。
・リーチインケースの前を通る人は、半分はちらりと見る。
購入者の半分は立ち止まってから購入している。
・レジから野菜売り場に行く動線上に、栽培ユニットが置いてある。
立ち止まった人の約80%は、立ち止まるもそのまま買わずに離れることが多い。
・通りかがかりの男性二人(業界人っぽい)、バジルを見て「萎びているな」と一言、買わずに通り過ぎる。
確かに、トレーの底の水が切れている。要注意のこと、、、
<陳列状態>
・リーチンインクーラーの中は片側4段(トレイ)、計8段(ユニット)。バジルとパクチーが半分ずつ。
トレイごとに生育段階が違っていて、植物が育っている様子が観察できる。
・クーラー前面の常温コンテナ(最大陳列量)は、
クリスタルレタス、11ケース✖️6個=66個
イタリアンバジル、6ケース✖️6個=36個
パクチー、3ケース✖️6個=18個
<陳列に関するコメント>
・側面は売れないだろう。リーチインクーラーの前のみで売れている。
・手に取っても最後はコンテナに戻す客が約半分。
なので、説明のポップが欲しい。売り逃しがかなりありそう。
おそらく、上手なマネキンさんがつけばかなり売れるはず。
→ 日販(半日) 5万円(250個)は売れる感じがする。
<小川の所見>
・総じて、来店客の反応は悪くないようだ。
根っこがついているので、植物が生きている感がある。
導入期で致し方がないが、野菜の鮮度はかなりよいはず。
しかし、コンテナの底の水切れがあり、鮮度が落ちているように見える。
・店頭のプロモーションがないので、どんな食べ方をしたらいいのかわからない。
たとえば、シズル感のある料理(パスタとかフォー)とかの写真があればよい。
・せっかくの根付き植物だから、家庭のキッチンの様子を写真で見せる。
我が家は、グラスに3種類ともに入れている。
バジルとパクチーは香りがよいので、鮮度感がある。
生きている植物なので、それだけでもインテリアにもなる。
・品種が足りない。和食向けの苗があれば、もっと売れそうだ。
例えば、本ワサビ(根茎)、シソ(花と実)、
小さめのダイコン、ニンジンなど、
和食に使用するエディブルフラワー各種など、
・表題に書いたように、
課題は山のように多いが、このビジネスは大きく伸びる可能性を感じさせる