漁夫の利? ユニクロが世界一の衣料品ブランドになる日

 週末に、スペインのZARAが大量閉店(1200店舗)を発表しました。ご存知のように、ZARAは売上高で世界一の衣料品小売ブランドです。2位のユニクロとは、売上規模で約35%の開きがあります。ZARAが311憶ドルに対して、ユニクロは209億ドル(2019年8月期と12月期)。ところが、コロナで状況が急変しそうです。

 

 ZARAの大量閉店で、ユニクロは漁夫の利を得そうなのです。ZARAとH&Mが世界的に大量閉店してる間に、アジアが好調なユニクロは世界ナンバーワンの衣料品小売業に躍進する可能性があります。

 昨年度の実績では、ZARAはグローバルな販売では好調が持続してました。ユニクロの柳井社長にしてみれば、ZARAの背中さえまだ見えていなかったはずです。ところが、金曜日(6月11日)の日経平均株価が大幅に下落したのに、ユニクロだけが独歩高で上昇していました。偶然のコロナ禍が、ユニクロに千載一隅のチャンスを与えてくれています。 

 ZARAは、スペインに本拠を置く衣料品のSPAです。一方、H&Mは、スウェーデンが本社のSPA。どちらも、今回のコロナで最も打撃を受けた国が本拠地です。それに対して、ユニクロは日本が本社ですが、売り上げの多くをグレーターチャイナ(中華圏と東南アジア)に依存しています。
  
 この本拠地(フランチャイズ)のちがいが、欧州の2ブランドとアジアのユニクロブランドの事業の収益性に影響を与えそうです。
 具体的に推論してみます。米国の百貨店(ニーマンマーカス)の破綻など、予兆がなかったわけではありません。ECへの事業転換が必至なことはどの企業でも常識です。ところが、欧州の2ブランドは売り上げ規模が大きいだけに、外出規制の影響が深刻でした。
 同社の発表によると、ZARAは店舗を15%閉店することになっています。欧州の店舗は逐次オープンされているようですが、このままで店売りの対前年度比が30%(半年分)落ちてしまうと、単純計算では1年後には、現状の売上が7割になります(閉店効果15%、既存店‐30%の半年分)。ECは伸びているので、そこまでは落ちないかもしれません。かりにネット販売で10%補うとしても、売り上げは8割程度になりそうです。
 2019年のザラの売上が311億ドルですから、7掛けならば220億ドル。2020年8月期の前半部分(~1月)は通常営業でしたから、対前年比80%で見積もると248憶ドル。対照的に、ユニクロの場合は、アジアの落ち込みは一時的です。コロナ後でもグローバルには5%増収の見込みです。となると、2020年か2021年には、ユニクロがザラを抜いてしまうシナリオが描けます。
 
 ユニクロは、先日(6月上旬)も店舗の状況をインスタグラムで紹介しましたが、三密が心配なくらいに、店舗には人が群れています。2ヶ月間で失った売り上げを、好調なEC販売と、自粛解除後に戻ってきた店売りでカバーできていそうです。基本はベーシックな商品だからです。しかも、夏用の商品が再度のオープンのタイミングに見事に当たった感じがあります。
 それに対して、アジア地区にも店舗があるとはいえ、ザラやH&Mは欧州市場がベースです。ユニクロのように、失った顧客を取り返すのは難しそうです。日本でもそうですが、春物の需要は完璧に蒸発してしまっています。海外からの情報やメールから推論するに、スペインやイタリアは混乱がまだ収拾できていないようです。
 そんなわけで、2021年度末には、ユニクロが売上高で世界ナンバーワンに躍進する可能性が予測できます。柳井さんは、どんな思いでZARAの今を見ているのでしょうか?