世界中で株価が暴落しているのに、日本株だけがなぜ上昇しているのか?

 本日の東京株式市場で日経平均は、大幅な上昇を続けている。10時40分現在で、17845.40円。前日比で1000円近い値上がりである。昨日も日経ダウは、3%程度上昇している。欧州市場と米国市場で暴落を続けているのになぜ?と不思議に感じる庶民が多いと思われる。めずらしく、その謎を解説してみよう。

 

 素人投資家は、これは政府日銀が資金を供給して株を買い増ししているからだとコメントしている。たしかに日銀からの資金供給はかなりあるだろう。しかし、いまの日本株上昇の本質は、ふたつの理由から来ていると考えるほうが納得できる。いたってシンプルな推論が可能だと思う。

 

1 日本独自な社会経済システム

 日本は島国である。さまざまな制度がガラパゴスだと言われている。一般的には、無駄だとか効率が悪いだとか、非難の的になることが多い。日本の社会制度や習慣が他国と大きく異なることもよく指摘されることだ。しかし、社会的・文化的な接合が難しいことが、新型コロナウイルス騒ぎに関してはプラスに作用していると考える。

 たとえば、国民皆保険の制度がそのひとつだ。欧州の国でももちろん皆保険制度はある。しかし、これだけ包括的かつ平等な保険制度は世界に類を見ない。結果として、日本人は病気になった時でも、安心して医療サービスを受けられる。だから、平均的な暮らしぶりのひとでも、今回の事態で経済的な心配からパニックに陥ることがない。

 中央大学大学院の真野教授(元法政大学大学院生)が分析している。日本は一人当たりの病床数が先進国でも飛びぬけて多い国である。しばしば医療制度の効率の悪さを指摘されるが、こんな場合は余剰設備が役に立つこともある。医療崩壊を防ぐには、石野和人病床数が大切らしい。真野さんの論説は、常識的に納得だった。

  

 朝方に、ボストンにいる社会人留学生からメールがあった。東海岸は大雪のようだ。ホームレスが外出禁止令で、凍え死なそうになっている。食べ物にありつけず餓死者が出そうとのこと。日本人の留学生が、その惨状を見かねてボランティアで活動している。偉い人がいるものだ。しかし、経済的に自由を重んじる反面で、弱肉強食、人種差別的なアメリカ文化の結果だ。

 そして、キスやハグは、日本人は少なくとも人前ではやらない。うがい手洗いの習慣や清潔な生活スタイルなど、ウイルス拡散をふさぐにはプラスに作用している。こうした生活習慣のちがいは大きい。

 ガラパゴスの日本文化をもっと称賛してもよいのではないだろうか?効率の悪さは、障壁を作り出すことにもつながる。経済社会的な鎖国は、悪いことばかりではない。

 

2 経済的な繁栄の地域別差異

 欧米諸国では、外出禁止令が3週間は続くだろう。アメリカの惨状は1.で紹介したが、欧州の先進国(英独仏伊)はもっと深刻のようだ。医療崩壊のイタリアや、メルケル首相が感染したドイツも情勢はきびしい。人間が移動できなくなると、経済が低迷することは、日本人もこの約三週間で経験してきたことだった。

 約束事を守らない年寄りはいるが、日本人はおおむねルールには従順である。そのおかげなのか、心配したほどのコロナ感染爆発は、いまのところ起こっていない。わたしが夜間にフィールドワークをしている個人飲食店は、まだ客が戻ってきてはいない。でも、大手のチェーン店は、先週と比較すると驚くほど客足が戻ってきている。

 たとえば、絶不調とおもわれている花き産業でも、ガーデンセンターやホームセンターの園芸売り場は、花苗を買いに多くの来店客がある。地方のガーデンセンターでは、売上が対前年比160%のところもある。ECも好調だ。旅行業とホテル、アパレルがとり残されている業種だが、こちらも案外とネット販売は好調に推移している。

 

3 国際的な資金移動

 この結果は、株式投資はどのような動きになるだろう?

 わりに単純な投資行動になるだろう。つまり、現状で比較的安定している経済の国(日本)に、投機マネーは移動してくるに決まっている。昨日からの日本株の上昇は、国際的に比較優位がある国に資金が移動した結果である。

 欧米の経済は、まだ先が見えない。しかし、日本は回復基調だと知ったら、、、、いままでは、オリンピックの足かせがあったが、いまや延期は既定路線になっている。中止にならなければ、経済にはネガティブに作用しない。皮肉なことに、経済対策で世界中の政府が現金をじゃぶじゃぶ市場に注ぎ込んでいる。

 その金は、経済対策だけに向かうとは思えない。巡り巡って株式市場に投じられるはずだ。以上、ここから日本株に資金が流れ込んでくる。この先の三週間、日本株はまちがいなく上昇していく。