(株)ムロオの山下俊一郎社長から、岡山県笠岡市の干拓地に日本有数の野菜温室ができることを知らされていた。去年の今頃である。山下君の会社は、SARAが栽培したトマトやパプリカの冷蔵輸送を一手に担うことになっている。野菜の販売先のひとつに、視察後に訪問する予定の食品スーパー「エブリイ」がある。
巨大温室群はオランダの技術によって建造されたものである。日本の施工業者もこのプロジェクトに関与している。バイオマス発電事業と野菜栽培事業の複合プロジェクトになっている。出資先を知らされてはいないが、カゴメなどの食品メーカーが野菜栽培事業に参入しているが、成功した事業モデルはいまだ存在していない。
LEDとリサイクル灌漑設備による植物工場も、その80%はいまだに赤字だと言われている。海外(ドイツ)からは、INFARMなどの
都市型立地の植物工場が日本に進出してくることが決まっている。従来型の自然光による野菜栽培との中間的な形態として、岡山県笠岡市のSARAに注目してみた。
自然環境保護の観点から、オランダ・デンマーク発のロックウール栽培にも限界が見えてきている。というのは、ロックウールは、ペットボトルやストリーなどプラスティック素材と同様に、産業廃棄物の処理問題を抱えているからである。SARAのシステムは、その点でいえば、バイオマス発電との複合プラントとなっている(会社資料による)。
この時期に、なぜそのような大規模な投資をしたのか? プロジェクトの出資者は、どのような意図と見通しをもってこの事業に取り組んでいるのか?ビジネス的な興味は尽きない。とりわけ、台風などの自然災害からの打撃は、露地栽培だけでなく施設園芸にも及んでいる。
他方で、従来からの大規模農業生産(とりわけ畜産業)は、地球温暖化へのマイナスの影響など、将来的に大きな困難が予想されている。取材は二週間後に迫っているので、これまで勉強してきた施設園芸や植物工場の知識を再度、棚卸してみたいと思っている。
なお、新社長に就任したばかりの岡崎浩樹社長(食品スーパー、エブリイ)へのインタビュ-も楽しみである。SARAの事業と関連して、鮮度向上を狙った農水産物の調達と加工を中心にお話を伺うことになっている。
どちらの取材も、「食品商業」のシリーズに向けて原稿にするつもりでいる。訪問は、11月15日と16日を予定している。