新元号「令和」の発表で、菅義偉(すが よしひで)官房長官が、次期総理候補としてにわかに脚光を浴びている。時の人として、かつて「平成」の元号を掲げた小渕恵三元総理の存在と並び称されるポジションに、菅さんは格上げされた感じがある。話題性のあるネタだけに、メディアは安倍総理の次が菅官房長だと持ち上げはじめた。
菅官房長官が、残念ながら、菅首相になることはないだろう。
わたしも、本心では菅総理を期待する人間のひとりだが、間違っても菅総理が誕生することはない。推察するに、本人にその気がないからだ。その根拠を、もっと違った角度から分析してみたい。わたしは二重の意味で、菅さんと共通点を持っている。秋田県出身で法政大学とつながっているから、菅さんの心情が手に取るようにわかる。
傍からは出世街道を歩んでいるように見えるが、本質は地味で控えめである。わたしたちは、ともに地味で性格が緩めなキャラの秋田県出身男子である。”はにかみや”だから、秋田男子は派手なことが好きではない。仕方なくセンターに座ることはあっても、自分からそれを望むことはない。できればそんな立場は避けたいといつも思っている。
野心家に誤解されることもあるが、本来的に欲のない人間である。だから、トップに上り詰めることに興味はない。しかし、策略家ではあるから、参謀の立場から世界を動かすことが好きである。なので、菅さんは安倍さんを担ぎだした。それとは逆に、誰か権力に興味のある輩に押されて、菅さんがトップに上り詰めることに心地よさは感じない。
自分の立場はわかっている。安倍総理あっての菅官房である。だから、周囲からヨイショされても、菅さんは絶対に「木に登る豚」にはならないだろう。賢明な人物のはずである。
菅さんは、美人の産地として有名な秋田県湯沢市の出身である。実家はいちご農家で、湯沢高校を卒業した後に上京、苦学して法政大学法学部を卒業している。政治家の秘書を務めた後に、横浜市会議員から神奈川県選出の国会議員まで上り詰めた経歴は、ウイキペディアで確認することができる。
わたしの目からみて、菅さんはマスコミの操作が上手である。ところが、世間が注目するほどには、ご本人は総理の座に固執しているように見えない。ふつうのタイプの政治家とは一線を画する人間である。その理由は、先に述べたとおりである。
わたしもそうなのだが、番頭さんや参謀に向いてはいるが、トップの座には居心地の良さを感じることができない人がいるものなのだ。菅さんもそのタイプだろう。根っからの参謀風に見える。黒子に徹して世界を動かすことに快感を感じられるが、自分が神輿に乗りたいとは思わない。
権謀術策に長けた、自分のような参謀がうまく見つかればよいが、見つからない場合は悲劇である。そのことを経験からよく知っているから、トップの地位にあるものの怖さもよく心得ている。キングメーカーは、自分が王様になってはいけないのだ。指揮官に徹することで能力が最大限に発揮できる。
落ち着き先を、大胆に予言してみよう。
安倍総理が退任した後、菅さんにはふたつの選択肢が残されている。安倍さんに代わる総理候補を探してくることが第一案。たとえば、小泉進次郎氏とか。あるいは、安倍さんとともに院政を敷きながら、背後から新しい政権をコントロールするかのどちらかでだろう。
ご自身が総理に上り詰めることは、菅さんにとっては得策ではない。年齢的に、今年70歳だから、後者のほうが自然な選択である。予言は的中するだろうか?