青山学院大の小野譲司先生のイニシアティブで、新しい研究会が発足します。2015年から続けてきた「科研費サービス研究」@法政大学の発展版です。研究者と実務家が共同で、日本マーケティング学会の部会として、「顧客起点のサービスマーケティング研究会」というプロジェクトを組織します。
日本では、サービスマーケティングの研究が定着しないのが現実です。今回は、小野さんを中心に、数少ない日本のアカデミシャンが実務家と一緒に、学術的なリサーチの場を共有できればと思います。
わたしは、最近では英文で最先端の研究論文を読む機会がなくなりました。本日は、2時間ほど早起きをして、小野さんに指定されていた2つの研究論文を読み切りました。大学院生に戻ったような気分です。とても興味深い論文でした。
以下のふたつは、技術(AIやIoT、ネットワーク技術)が従業員と顧客との接点(両者の役割)を変えてしまうという内容です。とくに後者の論文は、サービスエンカウンターの在り方が変わる枠組みを与えてくれます。
Gielbelhausen et al.(2014), “Touch and Tech when Technology Functions as a Barrier or a Benefit to Service Encounters.”
Lariviere et al.(2017), “Service Encounter 2.0: An Investigation into the Roles of Technology, Employees and Customers.”
なお、小野さんのプロジェクト企画書は、以下のようになっています。
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「マーケティング・リサーチプロジェクト研究計画書」
プロジェクト名称: 顧客起点のサービスマーケティング 研究会
代表者名 氏名(フリガナ): 小野 譲司 ( オノ ジョウジ )
所属・役職: 青山学院大学 経営学部・教授
研究目的:
サービス・マーケティング分野の学術研究に基づいて、顧客起点のサービス・マーケティングのマネジメント課題を各種の顧客データを用いて、理論的かつ実証的に探求し、解決策を導くための枠組みと手法を開発する。
サービス産業に焦点を当てた研究は数多い。例えば、個別産業に特化した研究(例えば、金融、医療、観光、交通など)に加えて、近年、工学系で萌芽しつつあるサービス工学やサービスサイエンスといった工学的アプローチがある。一般的な経営学でもケース研究の対象となることは言うまでもない。その中にあって、本リサーチプロジェクトは、サービスマーケティング分野で蓄積された伝統的および先端的な研究知見に依拠し、マーケティング研究ならではの視点と知識を探求し、実務と研究に関心の深い学会員とも共有し、発展させる機会とする。
研究方法および研究計画:
具体的な研究課題は3つある。
サービス品質・顧客満足・ロイヤルティ連鎖の測定と分析、そして、業績データとの関連性についての分析手法と指標を検討し、実証研究を行う。データは、過去9年間のJCSI(日本版顧客満足度指数)データ、ならびに個別企業のVOC(顧客の声)データ、企業ないしブランド単位の業績データを用いる(研究に用いるJCSIデータはサービス産業生産性協議会の協力による)。
顧客フィードバックデータ(VOC、サーベイ、行動履歴などの顧客データ)の収集、分析、活用に関して、分析手法をはじめとした技術的側面と、マネジメントサイクルをいかに構築するかについての組織的側面の検討を行う。
顧客マネジメント論における顧客資産のマネジメントに、紹介価値、影響価値、知識価値を含めた顧客エンゲージメントを考慮した枠組みとその有効性を検討する。
研究期間 2018年4月~2019年3月
企画運営メンバー(所属・役職)
小川 孔輔 (法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科・教授)
神田 晴彦 (野村総合研究所ビッグデータイノベーション推進部・上級研究員)
酒井 麻衣子 (中央大学商学部・准教授)
田原 祐太 (株式会社インテージコンサルティング)
森川 秀樹 (株式会社インテージコンサルティング・執行役員)
山岡 隆志 (名古屋商科大学 商学部・教授)