新規事業(プロジェクト)の辞めさせ方(累積損失キャップ制)

 先週の土曜日(12月9日)に、ストライプインターナショナルの代表取締役社長、石川康晴さんに大学院で講義をお願いした。「社長と会社の成長」の話をお願いしてあった。当日の講演タイトルは、「ストライプインターナショナルのイノベーション」に変わっていた。

 

 石川さんとは、2010年3月にお会いしている。つくば駅周辺のショッピングモールで、earth music & ecologyの小さな店舗を見つけたことが岡山本社に電話することになったきっかけである。正確に言えば、いまは引退したingniの青井元社長の紹介だった。

 当時(2009年決算)の売上高は、約240億円。お会いした直後に、宮崎あおいのCMでブレイクする。200億円ちょっとの会社が13億円を投じてテレビ広告を打つ。そのころのブログにも書いたが、「地方の従業員のためにテレビ広告を放映する戦略」が成功する。ES重視の路線がここからスタートした。

 その後の大躍進は、ブログ読者も知るところである。2017年度は、約1400億円まで売り上げが伸びそうだ。衣料品業態を飛び越えた食品やホテル事業にも手を伸ばしている。中国にホテルを出店する無印良品のようだ。ライフスタイル企業になろうとしている。

 

 講演でわたしがもっとも注目したのは、新規事業に「撤退ルール」を設定していることだった。たとえば、ある新規事業が累損が50億円を超えたら撤退するなど。損失にキャップを課することだった。企業が成長していて、全社で利益が出ているからできることだが、カジュアルに新規事業に進出できる。

 このルールがあれば、大やけどをしなくてすむ。いまでもしばしば思い起こすのが、ユニクロの野菜事業の進出だった。あのとき(2003年~2004年)は、累損のキャップは30億円くらいに設定されていたはずで、担当の柚木治さん(現GU社長)は28億円を失なった。

 さて、わが現役院生(ストライプの現役部長)が担当する新規事業は、これまでで最大の累損キャップが設定されている。石川さんのような社長の下で働くのは、ユニクロの柳井さんの指揮下で働くのとはまた、ちがった大変さがありそうだ。

 

 英語で「Big mouth」は、「大言壮語する人」「大きな話をする人」の意味だ。大ほらを吹くくらいの狂人でないと、大きな事業家にはなれない。それでは、単なるほら吹きと真の事業家を分ける要因は?

 思うに、それは、動物的な勘と冷静な分析力、そして決断力と最後は運だろう。ここまでは、引きがよかった起業家の石川さん。最後の成功を決めるのは、おごらない謙虚さだろう。ご注意を!