周りを見渡すと、施設やモノを共同利用する「シェアリングビジネス」が花盛りである。モノを所有するのではなく、モノの使用権をレンタルするサービスが主流になっている。
古くは「コインパーキング」がシェアリングビジネスの“走り”だが、最近では「カーシェアリング」が普及し、宿泊施設の「エアビーアンドビー」なども広がっている。
立川にあるタクシー会社の事業部長さんは、女性ドライバーが老人や女性を相乗りさせるライドシェア事業を卒業プロジェクトにしている。又、以前に巻頭言で紹介した「airCloset(エアークローゼット)」(女性向けレンタル衣料サービス)は、今年から旅行会社と組んで新しいビジネスを開始した。旅先のホテルや旅館にレンタル衣服を届けるサービスである。
宅配便でスキーやスキー靴を届けるサービスは前からあったが、旅行先に衣服を届けるレンタルは、ありそうでなかったサービスだった。おかげで、株式会社エアークローゼット(天沼聡社長)のレンタル事業は絶好調が続いている。会員になるためには数か月の待ち時間が必要である。
私自身もシェアリングビジネスに関与を始めている。時代の趨勢とも思えるのだが、まずは昨春、仲間と千葉県八街市で「シェアガーデン」を始めた。家庭菜園のビジネス版である。
レストランや食品スーパーに区割りした農地を貸して、そこに例えばサラダ用の野菜の種を植える。我々は、圃場の管理と収穫までを請け負い、収穫物を店舗に届けるサービスである。まさしく”Farm To Table”を農地のシェアで実現した事業である。事業は順調に成長している。2つ目は、クラフトビールの醸造施設をレンタルするShared Brewery(シェアードブルワリー)(小林大亮代表)である。これは、八王子にある醸造所兼店舗で、利用者が世界にたった一つのオリジナルビールを作ることができる。
翻って、わが花業界を眺めてみると、伝統的な“シェアリングビジネス”が存在していることに気がつく。観葉植物のレンタルビジネスである。いわゆる「貸鉢のサービス」なのだが、最近ではオフィスに植物をレンタルするだけでなく、ドラマの撮影現場などにもグリーン&フラワーを供給している。
また、全国にある植物園なども、広い意味では、シェアリングビジネスと言えるだろう。エアークローゼットは、あったらいいけど実現はちょっと難しいかなという「隠れたニーズ」を掘り起こし、そこに経済性(節約志向)や楽しさ(仲間と一緒)などの提案をサービスとして実現したものである。わが業界からも、新しい発想からシェアリング社会の流行に積極的に関与する事業家が登場してもよいように思う。