【講義レジュメ】 野田将克(花恋人・代表取締役)「地方起点のフラワーショップのチェーン展開」(大学院)

 今週土曜日(11月18日)のIM研究科の授業は、事例研究1「地方起点のフラワーショップのチェーン展開」。講師は、「(株)花恋人」代表取締役、野田将克さん。ご自身のキャリアに始まり、現在のチェーン事業について話していただく。講義レジュメをアップする。

 

 講義レジュメ

 講師:野田将克氏(花恋人・代表取締役)

 テーマ「地方起点のフラワーショップのチェーン展開」

 
1. 現在までのキャリアについて
【カネボウ】
工学部(化学系)を卒業後、2002年カネボウ株式会社(現クラシエ株式会社)入社。カネボウは中核事業を5事業(①化粧品事業、②トイレタリー事業、③繊維事業、④食品事業、⑤薬品事業)を展開しており、食品事業の研究部門へ配属
食品事業では①菓子事業、②食品事業、③冷菓事業、④飲料事業を展開
食品研究所にて、研究員として菓子事業の中の「ねるねるねるね」の研究開発を行い、「ポッピンクッキン」ブランドを立上げ、新たな⑤知育菓子事業として事業が発展。
現在知育菓子事業はクラシエの食品事業において柱事業に成長。

 

【中小企業診断士登録】
2004年カネボウの粉飾決算により債務超過による経営破綻、その後産業再生機構による再建、投資ファンドによる再建を経験。投資ファンドにおける経営再建についてはプロジェクトとしてかかわり、再建手法、リスクテイクの手法を学ぶ
それがきっかけで企業診断や再建にも興味を持ち、2011年4月に中小企業診断士登録。メーカー系、広告宣伝系、ファブレス系の診断、同業の花屋さんの診断を実施。

 

【株式会社花恋人】
2010年株式会社花恋人に入社。
奈良県橿原市(人口12万人)の都市に、1971年に父親が創業し、半径5㎞圏内のドミナントで4店舗展開。低価格を強みに、ホームユース切花、仏花を中心に販売し、通常の花屋さん1店舗当たりの売上が3000万と言われる中で、1億2千万の売上を記録。ピーク時には5店舗経営してきた。しかし2004年あたりからスーパーやホームセンター、道の駅の花売場が低価格での販売が始まり、徐々に価格競争が激化していき、2007年から赤字化が常態する。その後2009年に1号店閉店、2010年に2号店閉店と一気に縮小及び、事業撤退へと加速化。
2010年に新規出店と同時に花恋人へ入社し、事業再生に取り組む。
その結果3年で赤字から脱却。徹底的にムダを排除。2013年から毎年3~4店の出店し、2017年には関東に進出開始。現在15店(関西14店舗、関東1店舗)。
  
2. カネボウでのビジョン
「どうせやるならヒット商品を作りたい」というのが目標。
ヒット商品の定義を「ねるねるねるね」の売上高と同様に10億円/年間と設定し(100円のお菓子で1000万食販売)。そのために何をすべきかを徹底的に追及。また、自分に何ができて何が得意で努力できるかを徹底的に分析
① 過去の研究員が行ってきた研究やヒット商品の研究開発を徹底定期に再現
② 過去10年のヒット商品を調査、キーワード抽出
③ 食品研究所・工場設備の分析により、競争力優位のシーズ分析
④ 技術・コンセプトの融合
⑤ パッケージ・ネーミング開発
⑥ 商品化へ向けた壁の対策・強化分析
(技術・労務・生産・財務・営業・開発部門の協力)
→ポッピンクッキンブランドの開発(2017年約30億超。現在中国・韓国含めたアジア、アメリカでも販売)

 

3. 産業再生機構、投資ファンドにおける会社再建
産業再生機構
① 事業仕分け
5つの区分(A~E)にわけ、D,Eランクの早期売却・撤退
資金確保のためにA事業の売却検討
② A~C区分についての詳細分析を実施し2年で再度仕分け
③ 残った事業を投資ファンドへ売却
投資ファンド
① 企業価値向上へ向けて事業を詳細に区分し、企業競争力を高める直接的な教育・訓練を実施
② 長期施策・短期施策を織り交ぜた骨太の事業再生の実施
③ 企業として存続してきたことの意義の深堀、今後存続をするための再定義を全員で考えることで
→複雑にからみあった様々な問題をシンプルに短期間で解決していく手法に感動を
覚え、事業再生や会社を発展させていくことや経営することに興味を抱き
中小企業診断士取得を決意

 

4. 家業である花屋を始めようとしたきっかけ
①価格競争の激化による収益力低下 ②社内の技術力の高さ ③青山フラワーマーケットの台頭 ④花業界の調査やインタビューから非常に難易度が高い
事業再生のノウハウと商品開発のノウハウで自分の力を試したいということと、労働集約産業・ブラック企業の代表である花ビジネスを変革したい、お花に新しい価値をつけて新たな売り方をしてみたいと思い決意

 

5. 中小企業診断士としての花業界の分析
花ビジネスでは3万店舗を超える事業所があるにも関わらず、チェーン化のモデルがほとんどなく、20店舗以上の専門店チェーン化を実施できているのは青山フラワーマーケット40店舗、日比谷花壇約40店舗のみ(2010年)。2017年では青山フラワーマーケット約100店、日比谷花壇約50店。また全体のマーケットも厳しく毎年5%低下し、10年で花屋さんが約4割減少し若い世代40代以下の花き購買額が継続的に低下。
しかしながら、様々な要因があるが、ほとんどが個人経営で、チャンスは非常に高い。
ポイントは仕組み作りと物流、人材教育、機会ロスの取り込み、労働生産性の改革
診断士として様々な角度から改善・改革を実施

 

6. 花恋人で実施してきたこと
①企業理念を「低価格で家庭に日常的にお花を届ける こと」から「ドキドキ・ワクワクや幸せ・楽しい生活を提供すること」と変更しお花を売ることから、気持ちを売ることとした
②扱いアイテムも花屋さんの技術や物作りの発想をもとに花+花関連雑貨を中心に品揃える
③業績向上に向けた施策実施
④様々な販路へ出店し、出店ノウハウ習得、消費動向を調査
⑤今後に向けて関東進出を含め全国展開への準備及びノウハウ取得
⑥今後の課題としてSPAならぬSPFの実現に向けたグローバルレベルでの商品開発、チャネル開発、仕組み作りの実施

 

7.現在の自己評価について
50点
プラス面
① 赤字化していた事業を黒字化させたこと
② チェーン化にむけた土台つくりを実行していき、基盤が見えてきたこと
③ 目的や価値を共有する企業が増加してきていること
マイナス面
① 目的や価値を共有する社内のスタッフが3割ぐらいにとどまっておりスピードが遅いこと
② 強みの商品開発が活かせていないこと
③ 業績優先の施策が9割であるため経営者としては一定の目標は達したものの、本来実施したいことが1割でとどまっていること