マーケティング学会の繁栄ぶりを喜ぶ

 昨日は、早稲田大学で開催された「マーケティング学会2017」のカンファレンスに招待を受けた。二番目の基調講演者としての登壇した。学習院の上田隆穂さんのセッションで、約40分間の基調講演を行った。そのあとで、いつものパネルディスカッションにも参加した。

 

 いただいたテーマは、「ナショナルメーカーの地域対応」。大体の流れは、ブログにアップしてある。数日前のブログを参照のこと。大筋はこんな感じだった。

 

 マーケティングの歴史からひも解いて、(1)分断の時代、(2)統合の時代、(3)細分化の時代を経た企業経営は、(4)グローバライゼーションに向かってきた。約150年間つづいてきた、2015年までのマーケティングのトレンドは、ここで反転する。

 その理由を述べる。(A)物流の問題で運べない世界の到来、(B)環境を汚さず有限な資源を効率よく使うため、(C)ローカルな資源とニーズにこそ差別化のポイントがある。したがって、スケール重視のマスマーケティングには限界がある。コストリーダシップは過去のもの。価格は当然の変数になった。

 というわけで、わたしの予言は、別の形での「分断の時代」(第5段階)の始まりが来ていることを示した。チェーン小売業はすでにその対応を始めている。例として、ローソンのビジネスモデルの転換を挙げた。大手食品メーカーは当然のこととして、ライオンのような海外展開が好調な日雑メーカーでも、国内重視に舵を切ることになるだろう。

 

 もうひとつの大事な潮流としては、消費者の価値観の変化、とくに食に関する意識と行動の変化に言及した。ビーガン、ベジタリアン、エシカルな消費者の大量発生についてである。

 世界中で、畜肉を食べる習慣が終わる。植物由来の肉代替品を消費することがふつうになる。となると、農業とフードビジネスに大変革が起きる。ローカルの議論以上に深刻な社会的な影響をもたらすのが、農と食にまつわる技術革命だ。

 産業革命に匹敵するイノベーションが、遺伝子レベル、加工技術レベルで始まっている。その兆しを示して、基調講演を終えた。

 

 ところで、そのパネルセッションには、(目見当だが)約250人の聴衆が参加していた。いまどき、台風の中、こんなにたくさんのオーディエンスを集められる学会はない。初代が石井淳蔵先生(神戸~流通科学大)、二代目が田中洋さん(中央大学)。後ろで学会活動を支えているのが、西川英彦さん(法政大学)だ。

 リサーチプロジェクトによる学会運営は、わたしのアイデアだった。西川さんがそれを発展させてくれた。おかげで。この盛況である。何事も、アイデアを提供して人間より、実行に移した人間の功績が大きい。西川さんの実行力に感謝したい。

 聞くところによると、学会員は2000人近いらしく、それも年々、会員数が伸びているらしい。実務(MBAホルダー)と学者のううまいコンビネーション。成功の秘訣は、MBA取得者のリテンションにあった。わたしが予見した通りのことが起こっていた。

 

 コングラチュレーションズである。この先もがんばってほしい。微力ながら、基調講演者として応援させていただいた。