かぜ除け、おとこ除け

 九州の取材で風邪を引いたらしく、この5日間はブログを書く気力が出なかった。喉の奥がいがらっぽく、鼻水が止まらない。そんな嘆きをLineの個人メールに流したら、親しい女性から風邪除けの「お守り」が届いた。ネット配信だから、もちろん画像のお守りである。

 

 聞けば、娘さんがお母さんのために細工してくれたお守りだという。ところが、よくよく見ると、これは「かぜ除け」のお守りには見えない。芸大志望の女子高生が制作したお守は、お寺か神社でいただいたという設定である。渋い朱色のグラフィックスで、表面にはそれらしく見事な刺繡が施されている。

 ところが、である。書かれた文字を一字一句読んでいくと、「なかがわゆみ(母の名)」ではじまって、表題が「ダメ男退散」となっている。思い当たる節がないわけではないわたしは、心臓が「どきっ!」。

 でも、これは、中川さんがわたしのためにアレンジしてくれた「かぜ除け」ではないぞ。娘さんがシングルマザーになってしまった母親のために用意してくれた「おとこ除け」のお守りではないか!

 

 娘さん作の「マントラ」(呪文)がそれに続いている。

 

 マントラ:

 ダメンズタイサン イケメンカンゲイ デキレバ タマノコシ

   

 実に秀逸な呪文になっている。この子のセンスは、芸大向きではないだろう。狙いは、早稲田か法政だろう。今からでも遅くはない。ソプラノの美声で観衆を圧倒したり、バイオリンでクラシックを奏でるよりは、もっと名声を得て金持ちになれる可能性が高い、文学の道を歩かせたほうがよい。

 もし若いときに芥川賞を外したら、そのあとは直木賞という手もある。60歳でも70歳を超えても、直木賞の場合は年齢は関係ない。早稲田に入ってから、たとえノーベル文学賞を逃しても、放送作家として活躍する道も開けている。法政ならば、シナリオライターは、それこそうじゃうじゃいるぞ。

 音楽の世界に身を投じてしまうと、将来の見通しが狭くなりすぎる。このユーモアのセンスと作風を、どぶに捨てさせるのはもったいない。中川さん。自分のおとこ除けもさることながら、かわいい娘さんには、早い時期に蚊取り線香が必要になるかもしれませんよ。