ユニクロ、大幅減益の背景

 ファーストリテイリングが2016年8月期の連結決算を発表した。税引き後利益で前期比56.3%の減少(480億円)となった。国内ユニクロ事業の不振が原因だが、柳井社長本人が認めているように、業績不振の最大の理由は値上げのタイミングが悪かったからだ。

 

 海外生産に依存しているので、円高で収益はマイナスになる。天候不順も響いただろう。しかし、海外事業は好調なので、減益の原因は国内事業に求められる。少し前には、GU(柚木治社長)の好調さを示す記事が日経MJなどに掲載されていた(2016年10月?日号)。

 それを補ったうえでのユニクロ本体の大幅減益は、2年連続(2014年と2015年)で実施した二度の値上げ(約10%)によるものだ。その証拠を示すことにする。以下で示す調査データは、日本版顧客満足度調査(2014年・2015年実施)、衣料品小売業のCS(顧客満足)と知覚価値(お値頃感)の主要指数の時系列である。

 2009年~2015年の二つの指標を、国内競合4社と比較したものである。ユニクロのCSは、二度の値上げ後には下がってしまった。しかし、ハニーズやしまむらなどの低価格ブランドでは、この期間に、知覚価値(お値頃感)とCSが相対的に高まっている。このデータには示されていないが、ライトオンなどもCSが上昇していた。

 

 ユニクロは、二度目の値上げで、知覚価値も大きく下がっている。国内の雇用制度を変更した2014年度にCSは上昇していた。この時点で値上げに走ったことが、その後の客離れを招いてしまった。2015年度のCS調査で、すでに今日の不振が予見できていたのである。

 この兆候(値上げで客離れが起こること)は、ファーストリテイリングの本社も気づいていたはずである。早めに手を打つタイミングを失ってしまったと思われる。会社が大きくなりすぎてしまったのだろうか?

 

 

<知覚価値>

    Honeys しまむら earth ユニクロ
2009年       69.5             72.4
2010年       68.9           71.8
2011年       71.2         72.9
2012年  72.4    70.0         72.0
2013年  69.9    66.4      69.8    70.0
2014年  69.4    67.8      69.1    71.4
2015年  71.7    68.3      73.8    69.2

 

<顧客満足>

            Honeys しまむら earth   ユニクロ

2009年              67.8                   70.0
2010年              67.2                   70.4
2011年              70.1                   72.3
2012年  72.5     68.9                   70.8
2013年  69.7     65.9      71.4       69.6
2014年  68.4     67.7      69.8       70.6
2015年  71.5     68.2      75.6       69.1

 

 柳井正会長兼社長は、記者会見で「顧客は生活防衛(意識)になっていて、値上げをすべき時期ではなかった。毎日、低価格で買い求めやすくすることが必要だ」と語っている。すこし残念だったのは、2020度に5兆円を目指すとしてきた売上高目標を、3兆円に引き下げることだ。